2016年10月

里山料理 じろう亭【大阪市 梅田/JR大阪】

北新地の御堂筋の近くに最近出来た瀟洒な和食店。付近で貸しビル業やたくさんの飲食店を経営する41才の青年実業家が儲けを度外視してつくった北新地に「ありそうでなかった」ほっこり系の普段使いできる趣味性の高いお店。

オーナーが自分で米を作っておられて島根と兵庫と鳥取の県境の日南町と言うところで低農薬栽培をし自身が美味しいと思う食材を全国から取り寄せ、素材感を活かした調理で提供する。

最初に突き出し数種類を所望したが自家製のこんにゃくや平飼いの鶏の卵を使った料理などが数品。それに合わせてお薦めの日本酒を合わせる。特に篠山の籠坊で界隈で一番美味しいと言われる藤木さんの黒豆はよく肥えていて味も香りも秀逸なもの。

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魚介も取り揃えていて、この日は縞鯵と明石の鯛の盛り合わせ。こういった普通のお造りがとても美味しい。22時からは黒豆を混ぜ込んだ手打ちうどんもあるので飲んだ帰りにも重宝。

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卵がかなり美味しかったのでお店一押しの肉巻を所望。甘辛く煮付けた上質の牛肉を手早く高温で巻き上げる。ビジュアルも美しく麦焼酎と一緒に食すと田舎に小旅行に行った気分。

お店はカウンター7席とお座敷13席(6席・7席)もあっていろいろな利用が出来るのでとても使いやすいと思う。その時々でいろいろなメニューがあるのでお薦めを聞くのがお薦めです。

*こちらのオーナーにこの日「ピコ太郎」なるものを教えてもらった。どこがおもろいのかよくわからんが今の世の中こんなもんなんだと実感。

大阪市北区曽根崎新地1-7-6 新日本新地ビル東館2F
06-6341-2636
18:00~27:00

大阪市 梅田/JR大阪 和食

びすとろぽたじえ 10月【大阪市 玉出】

最近お気に入りの地元のビストロなんだけど良く見かけるフュージョン系でアーティスティックなフレンチとは全く異なり1980年代のボキューズやシャペルが作っていた料理を食せる希少なお店。お店の壁には当年75才?の肥田順シェフが働いていた頃のポキューズとの写真が飾られている。日本に帰ってからは辻調の教授をずっとされておられたと聞き及ぶ。

辻調を退職されてから同じ名前のお店を本町で長い営業されていたんだけど今年になって生まれ育った住吉に移転。カジュアルだけど本物のヌーベルキュージーヌをしっかりと食べることが出来るとても嬉しいお店である。以前に一度だけ行って大ファンになった。

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アラカルトメニューもたくさんあるがプリフィクスになったコースメニュー6000円がお得でお薦め。アミューズは焼き茄子の冷製スープ。多分これはフランスにはない料理と思う。透明感のある滑らかな味わいのなかに焼き茄子の香りがふわっと漂う。

スープとともに豊中の有名店「boulanger TAKEUCHI」のパンと特製の豚肉のリエットが登場。これはいくらでもお替わりが出来るらしい。

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前菜はこの店で個人的に一番好きなシェフのスペシャリティーのフォワグラのテリーヌ。専用の壷に入れて焼き上げてそれを大きなスプーンでこそぎ取って盛りつける。見た目の華やかさはないけど滑らかで口に入れると濃厚で特有のネットリしたレバーの旨味にうっとりする。脂っぽさや雑味や癖は全くない。今まで食したフォワグラ料理の中でナンバーワン。添えられた無花果とともにピノノワールで喉に流し込む。

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前菜2皿目は鹿肉のパテ・アンクレットをチョイス。いわゆるパイ包み焼き。山陰地方によくいる害獣の鹿ではなく北海道の食用にされる蝦夷鹿と聞く。部位はお尻の赤身部分。フォンドボー(胸腺肉)を入れて風味と脂分を足していると言っておられた。クラシカルなスタイルのパテだけどしっかりと肉の味がして食べ応え満点。ワインとハーブに漬け込んで下処理をしっかりしているので臭み等は全くなし。

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別注文のサーモンマリネ1800円はリオンのレストランで出される古典的なもの。塩とハーブとオイルでマリネされたサーモンの上にトマトのソルベがのせられる。サーモンの塩っけとソースとして使われる滑らかなトマトソルベの相性にビックリ。ムシャムシャ一気に食べてしまう。

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これも別注文の南仏野菜の煮込みとポーチドエッグ1600円。玉子の上のソースにはほうれん草で色付け。ナイフを入れると卵の黄身が飛び出してビジュアルの美しさ満点。ラタトゥーユの美味しさも突き抜けている。塩の加減がとてもいい。すべての料理に共通するのが味の輪郭がしっかりしていてぼんやりしたものがない。

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メインディッシュは小鯛のじゃがいも鱗焼きでポールポキューズのスペシャリティ。本来は平目を使ってするんだけどそれのミニチュア版。塩分の立ったソースも秀逸だし、ウロコに模したじゃがいもがパリパリの食感でふわふわの小鯛と一緒にいただくととても不思議な小旅行体験ができる。

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別注文の豚バラ肉の黒ビール煮込み1800円。トロトロに煮込まれた巨大なバラ肉は脂がしっかりと落ちていて思ったよりもあっさりしている。焦がし玉ねぎで作ったソースが美味し過ぎて卒倒しそうになる。下ごしらえ含めて手間と暇のかかった古典的なオーセンティックなフレンチはどの皿も突き抜けた美味しさがある。

デザートは好きなものを好きなだけいただける。個人店でここまで揃えている店は珍しい。

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グレープフルーツの皮のコンフィチュールやグレープフルーツのコンポート、プリンのようなもの、自家製フィナンシェ、マンゴーのタルト、真っ白のコーヒー風味のブランマンジェ、チョコレートケーキ、シャーベット2種、グレープフルーツのカモミールシロップ漬けなど・・

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食後は青カビチーズを所望。一緒にプロバンスの超甘いワインを出していただく。貴腐ワインではないけどディケムをいただくような幸福感に包まれる。当然ブランディーやグラッパもあります。

コスパも素晴しく価格以上の価値は間違いなくあると確信。出来ればカウンタ−を予約してシェフと料理の話をしながらいただくとよりいっそう食事が楽しめる。特にフレンチに携わっている料理人は彼が現役のうちに仕事を見ておくことをお勧めします。

大阪市西成区玉出中2-13-31
06-6651-9568

大阪市 玉出 フレンチ

大和屋 お蕎麦の会2016【大阪市 心斎橋/四ツ橋】

毎年お呼ばれする料亭大和屋さんのお蕎麦の会に本年もお招きいただき新蕎麦を楽しむ。

大和屋さんの端正な日本料理と蕎麦のコラボで打ち手は“そば打ちの神様”こと高橋邦弘氏。高齢となり現在は大分の臼杵に住まれていると聞く。大和屋さんも1875年創業なので来年には創業140年を迎えられる。
私の若い頃の記憶では宗右衛門町に能舞台を持つ大料亭として大阪で最も格式の高い飲食店として有名であった。その宗右衛門町の本店は2003年に閉められ現在は大丸心斎橋北館と横浜、東京にお店を出されている。

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先付け前菜はほうれん草、蒸し鮑、蟹身にカボスの果汁で作ったゼリー状の板がかぶせられる。ムッチリと蒸された旨味たっぷりの鮑と上質で甘い紅ズワイ蟹の身のそろい踏み・

別の皿には松ぼっくりの形に剥かれた子芋を蒸して揚げたものと大粒の新銀杏と真魚鰹の西京焼。季節の変わり目にぴったりの献立。

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食事の途中で高橋名人の蕎麦打を見学。カウンターテーブルにきちんとはめ込まれた特製の蕎麦打ち台の前で蕎麦を伸ばして蕎麦打包丁で細かくカットする。すべての所作が美しく手なりに流れるような仕事。うっとりと見とれてしまう。

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茶碗蒸しの器に入った名残の鱧の小吸い物。蕎麦米の入った蕎麦湯のような出汁が特徴。

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お造りは軽く塩をした鯛と剣先烏賊と帆立と北海道の大粒の雲丹。盛りつけも端正で決まりまくっている。

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こちらのお店のスペシャリティの鰻を黒糖で炊いたもの。鰻の八幡巻のような感じだけど甘味を利かせて濃いめの出汁でしっかりと煮込まれている。しかしながら思いのほかさっぱりして後口もとてもいい。

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天ぷらは大振りの活車エビ。添えられた野菜は松茸と大葉。

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最後にメインディッシュの蕎麦登場。今年は北海道の摩周湖周辺の蕎麦の産地の収穫が悪かったとのこと。いつも通りの二八の透明感ある蕎麦には全く雑味がなく舌触りも滑らかで、固くはないけど弾力があってモチッとした食感。小麦が入っているのでのど越しもいい。喉に入ったあとに蕎麦の香りが鼻に抜ける。薬味はいつもほとんど使わない。汁は甘さ控えめだけど関東の汁のように辛くなく柔らかで角の取れた優しい味わい。

普段は香りと味のバランスを考えて複数の産地の蕎麦をブレンドして使用すると言っておられた。

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蕎麦w提供されたあとに名人がご挨拶に来られて口上を述べる。昨年首の骨を骨折したけどどういうわけかそれが繋がって、最近ボチボチ蕎麦を打っているとのこと。25年間ずっと大和屋さんで新そばを打ちにきているとも言っておられた。

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デセールは冨有柿と栗羊羹。羊羹には岩塩がパラリ。
何を食しても上質でいい時間を過ごすことが出来ました。

大丸心斎橋北館13階

大阪市 心斎橋/四ツ橋