又三郎 10月【大阪市 長居】

約30年くらい仕事とプライベートでお世話になっている大切な方の快気祝いにずっと前から予約してやっと訪問。熟成肉のパイオニアとして常にトップランナーをひた走る此方の店は今や予約がほぼ取れない人気店。インバウンドの客も多くこの日も後ろの席に香港の有名なムービースターが来られていた。その人気の秘密は肉の仕入れから熟成まで、また食べごろを見分ける妥協のない目利き、もっと美味しく食べてもらおうという創意工夫に魂を燃やすオーナーをはじめとするスタッフにある。

この店には超繁盛飲食店の必要要素のすべてがある。最近もお店をリニューアル・リデザインされて使いやすい個室の増設や床などを張り替えてイメージ一新。常に進化し続ける此方の店は同じ飲食店経営者として羨望の眼差しを禁じ得ない。これだけ繁盛しても次の一手を常に考え、アメリカや最近はスペインバスクに肉料理の研究に行かれるオーナーマダムにいつも敬服する。

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いつものように最初は肉のプレゼンテーション。最近ご無沙汰であった高知県の土佐赤牛のリブロース熟成73日目と松坂牛の熟成45日目のモモ肉のザブトンと呼ばれる部位を本日は焼いていただけるとのこと。これだけで口の中が肉の戦闘モードになる。

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最初の前菜はブリスケという部分の薄切りをさっと焼いていただく。肩ロースの近くの肉だけど希少部位。火元から熟成香が立ち上りこれがアペリテェフとなる。食味は柔らかくてコクがあって後味もスッッキリして舌の上でジュワッと溶ける感じもある。現在黒毛和牛を始め様々な食材が値上がりしてしかも供給量も少なくなっていい肉が手に入りにくい状況が続いていると言われている。その中でオーナー自身が理想とする熟成に向くポテンシャルをもった肉を丹念に調べ上げて常に一頭買いされる。熟成に向かない部位は焼肉に使用したりランチのハンバーグやスープの材料にされたりすると聞き及ぶ。

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カリフラワーのスープに熟成肉の切れ端で作ったコンソメゼリーを浮かべ、その上にバスクでオーナー自らが買ってきたチーズのスライスが添えられる。一口含んだのち、あっと幽かな叫び声が出る。和食の出汁を思わせるような澄んで透き通った滑らかな口当たりのスープは喉にストンと垂直に落下する。コンソメの旨味と相まってチーズのコクを衣に纏い、えも言えぬ縦糸と横糸を紡ぐ一つのムスビをイメージさせる佳品となる。

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大きな木の皿に入って出てきた前菜は自家製の熟成肉の入ったソーセージとサワークラフト、皮付きの豚肉をカリカリに炭火で焼き上げたもの、熟成肉のハンバーガーはバンズも地元の有名店でレシピ指定で作っていただいているとのこと。パリパリした食感のバンズと熟成香のあるパテが何とも言えない相性でワンランク上の大人のバーガーである。自家製のベーコンに価格高騰中の生野菜。

提供する料理の印象がマンネリにならないように前菜は常に進化する。オーナーやシェフが自身の審美眼をもって大阪のみならず様々なイタリアンやフレンチ、和食の繁盛店を食べ歩き勉強されてそのよい部分のエッセンスのみを自分の店に取り入れる。

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ワインはいつもいただくカリフォルニアのオーボンクリマ<Au Bon Climat>6500円。価格の割りには味が複雑で樽の香りも効いていて余韻深く、苦味もありながらとても上品でエレガントなこの店のオーナーのような味わい。

私よりも遥かに年上だけど全くそうは見えない長居の「中村あずさ」こと店主の荒井世津子氏は自叙伝を出したりテレビをはじめとする様々なメディアで紹介される有名人。従業員を指導するときの鬼の顔とお客を接遇するときのウイットに富んだ会話の際のおもてなし感溢れる笑顔のギャップには高低差がありすぎていつも耳がキーンとなる。

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こちらのお店は季節ごとに料理教室やBBQなどのイベントを開催したり様々な種類の肉で熟成を試したり、新商品を開発したり私の知っている焼肉店では最も革新的で客の嗜好に合わせた店作りを絶え間なく続けている。お客に楽しんで満足してもらうという気持ちの上に従業員満足に対する思いも強く、定期的に従業員の家族参加の食事会をしたり海外での視察に社員を連れて行ったりなど、現在は週に2回の休みにしようかどうか悩まれていると聞き及ぶ。

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口直しは富有柿とシャインマスカット。一口食べると気分はまーすかっとした。

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しばらくして肉のかたまりをまんべんなく移動させながらアルミホイルで休ませ、約40分かけて目の前で焼かれた肉の塊がキッチンでカットされて銘々に盛りつけられて登場。

土佐あかうしのロースは噛み締めたときに甘い脂とミルキーな肉の旨味が口の中に迸る。噛み締めたときの食感も飲込んだあとの茶豆のような香りも炭香もすべてが瞬時に脳のシナプスを通して大脳に強烈な信号を送る。

「脳髄の番人の記憶力も朦朧となり理性の器も蒸留器のようになる」というハムレットの一節を思い出す。

松坂牛の方は赤身肉なんだけど小さな小サシがしっかり入っていてしっかりとした噛み応えと和牛の甘い脂と焙煎したてのアーモンドやナッツの香りが脳幹を刺激する。噛めば噛むほど味わい深く添えられた岩塩や生の胡椒を付けてそれぞれを食べ比べると多幸感に包まれながら知覚のゆがみを感じて夢幻状態に陥りそうになる。

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ワインが少し残っていたのでオーナーがバスクで買ってきた青カビのチーズを少しいただく。

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食後は小松菜で作ったデザートドリンクで〆。周りを見るとこの日も超満席。

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デセールもこだわりがあって専任のパティシエが季節にあったものをそのつど考える。美味しいだけのお菓子は誰にでも出来るが肉を食べたあとで重たくなく後口のいい、印象にも残るデセールを常に開発されている。

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ベリーのソルベも滑らかで酸味と甘味のバランスも抜群。

こちらは美味しいだけではなくて楽しくいつまでも記憶に残る関西では希有な素晴しいお店です。まさに「THE BEEF WONDERLAND」。 記念日にオススメです。。

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以下こちらのオーナーのブログより
料理研究家の山田直美先生と直美先生が主催する
お料理教室の生徒さんたち10人余りで、
スペインのバスク地方に出掛けました。
参加されている方は、
皆さん、食いしん坊で好奇心の塊のような方ばかり,
居心地良かった〜(^∇^)
行く先々の市場で、
食材を買い集め、
スーツケースは、軽く23キロオーバーは、
当たり前⁉️(^◇^;)、
何とか32キロ(超過料金の範囲内)
収めようと、あの手この手(@_@)
バスク豚の農家さん
ワイナリーのマルケ ド ムリエタ
有機のオリーブオイルの農家さん
イデアサバルのチーズを作る羊農家さん
ビルバオ、ログローニョ、サンセバスチャンの
旧市街のバル巡り
フレンチバスクの小さな村は、
フランス映画に出て来そうな佇まい
ステーキを食べ歩いた3軒のお店も印象深かった
BEDUA、ネストール、カーサ フリアン、
特にBEDUAは、今の私にとって実現させたいお店に
一番近い存在です。
バスクの穏やかな空気を吸って、帰って来ました(^ν^)
また、何処かへ出掛けるまで、精を出して働きます‼️(*^^*)

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この日は特別にカレーパンの試作を試食させていただく。日々前進する姿に頭が下がります。

大阪市住吉区長居2-13-13
営業時間:11:30~14:00
17:30~23:00
定休日:木曜日

大阪市 長居 焼肉