最近お気に入りの地元のビストロなんだけど良く見かけるフュージョン系でアーティスティックなフレンチとは全く異なり1980年代のボキューズやシャペルが作っていた料理を食せる希少なお店。お店の壁には当年75才?の肥田順シェフが働いていた頃のポキューズとの写真が飾られている。日本に帰ってからは辻調の教授をずっとされておられたと聞き及ぶ。
辻調を退職されてから同じ名前のお店を本町で長い営業されていたんだけど今年になって生まれ育った住吉に移転。カジュアルだけど本物のヌーベルキュージーヌをしっかりと食べることが出来るとても嬉しいお店である。以前に一度だけ行って大ファンになった。
アラカルトメニューもたくさんあるがプリフィクスになったコースメニュー6000円がお得でお薦め。アミューズは焼き茄子の冷製スープ。多分これはフランスにはない料理と思う。透明感のある滑らかな味わいのなかに焼き茄子の香りがふわっと漂う。
スープとともに豊中の有名店「boulanger TAKEUCHI」のパンと特製の豚肉のリエットが登場。これはいくらでもお替わりが出来るらしい。
前菜はこの店で個人的に一番好きなシェフのスペシャリティーのフォワグラのテリーヌ。専用の壷に入れて焼き上げてそれを大きなスプーンでこそぎ取って盛りつける。見た目の華やかさはないけど滑らかで口に入れると濃厚で特有のネットリしたレバーの旨味にうっとりする。脂っぽさや雑味や癖は全くない。今まで食したフォワグラ料理の中でナンバーワン。添えられた無花果とともにピノノワールで喉に流し込む。
前菜2皿目は鹿肉のパテ・アンクレットをチョイス。いわゆるパイ包み焼き。山陰地方によくいる害獣の鹿ではなく北海道の食用にされる蝦夷鹿と聞く。部位はお尻の赤身部分。フォンドボー(胸腺肉)を入れて風味と脂分を足していると言っておられた。クラシカルなスタイルのパテだけどしっかりと肉の味がして食べ応え満点。ワインとハーブに漬け込んで下処理をしっかりしているので臭み等は全くなし。
別注文のサーモンマリネ1800円はリオンのレストランで出される古典的なもの。塩とハーブとオイルでマリネされたサーモンの上にトマトのソルベがのせられる。サーモンの塩っけとソースとして使われる滑らかなトマトソルベの相性にビックリ。ムシャムシャ一気に食べてしまう。
これも別注文の南仏野菜の煮込みとポーチドエッグ1600円。玉子の上のソースにはほうれん草で色付け。ナイフを入れると卵の黄身が飛び出してビジュアルの美しさ満点。ラタトゥーユの美味しさも突き抜けている。塩の加減がとてもいい。すべての料理に共通するのが味の輪郭がしっかりしていてぼんやりしたものがない。
メインディッシュは小鯛のじゃがいも鱗焼きでポールポキューズのスペシャリティ。本来は平目を使ってするんだけどそれのミニチュア版。塩分の立ったソースも秀逸だし、ウロコに模したじゃがいもがパリパリの食感でふわふわの小鯛と一緒にいただくととても不思議な小旅行体験ができる。
別注文の豚バラ肉の黒ビール煮込み1800円。トロトロに煮込まれた巨大なバラ肉は脂がしっかりと落ちていて思ったよりもあっさりしている。焦がし玉ねぎで作ったソースが美味し過ぎて卒倒しそうになる。下ごしらえ含めて手間と暇のかかった古典的なオーセンティックなフレンチはどの皿も突き抜けた美味しさがある。
デザートは好きなものを好きなだけいただける。個人店でここまで揃えている店は珍しい。
グレープフルーツの皮のコンフィチュールやグレープフルーツのコンポート、プリンのようなもの、自家製フィナンシェ、マンゴーのタルト、真っ白のコーヒー風味のブランマンジェ、チョコレートケーキ、シャーベット2種、グレープフルーツのカモミールシロップ漬けなど・・
食後は青カビチーズを所望。一緒にプロバンスの超甘いワインを出していただく。貴腐ワインではないけどディケムをいただくような幸福感に包まれる。当然ブランディーやグラッパもあります。
コスパも素晴しく価格以上の価値は間違いなくあると確信。出来ればカウンタ−を予約してシェフと料理の話をしながらいただくとよりいっそう食事が楽しめる。特にフレンチに携わっている料理人は彼が現役のうちに仕事を見ておくことをお勧めします。
大阪市西成区玉出中2-13-31
06-6651-9568