毎年お呼ばれする料亭大和屋さんのお蕎麦の会に本年もお招きいただき新蕎麦を楽しむ。
大和屋さんの端正な日本料理と蕎麦のコラボで打ち手は“そば打ちの神様”こと高橋邦弘氏。高齢となり現在は大分の臼杵に住まれていると聞く。大和屋さんも1875年創業なので来年には創業140年を迎えられる。
私の若い頃の記憶では宗右衛門町に能舞台を持つ大料亭として大阪で最も格式の高い飲食店として有名であった。その宗右衛門町の本店は2003年に閉められ現在は大丸心斎橋北館と横浜、東京にお店を出されている。
先付け前菜はほうれん草、蒸し鮑、蟹身にカボスの果汁で作ったゼリー状の板がかぶせられる。ムッチリと蒸された旨味たっぷりの鮑と上質で甘い紅ズワイ蟹の身のそろい踏み・
別の皿には松ぼっくりの形に剥かれた子芋を蒸して揚げたものと大粒の新銀杏と真魚鰹の西京焼。季節の変わり目にぴったりの献立。
食事の途中で高橋名人の蕎麦打を見学。カウンターテーブルにきちんとはめ込まれた特製の蕎麦打ち台の前で蕎麦を伸ばして蕎麦打包丁で細かくカットする。すべての所作が美しく手なりに流れるような仕事。うっとりと見とれてしまう。
茶碗蒸しの器に入った名残の鱧の小吸い物。蕎麦米の入った蕎麦湯のような出汁が特徴。
お造りは軽く塩をした鯛と剣先烏賊と帆立と北海道の大粒の雲丹。盛りつけも端正で決まりまくっている。
こちらのお店のスペシャリティの鰻を黒糖で炊いたもの。鰻の八幡巻のような感じだけど甘味を利かせて濃いめの出汁でしっかりと煮込まれている。しかしながら思いのほかさっぱりして後口もとてもいい。
天ぷらは大振りの活車エビ。添えられた野菜は松茸と大葉。
最後にメインディッシュの蕎麦登場。今年は北海道の摩周湖周辺の蕎麦の産地の収穫が悪かったとのこと。いつも通りの二八の透明感ある蕎麦には全く雑味がなく舌触りも滑らかで、固くはないけど弾力があってモチッとした食感。小麦が入っているのでのど越しもいい。喉に入ったあとに蕎麦の香りが鼻に抜ける。薬味はいつもほとんど使わない。汁は甘さ控えめだけど関東の汁のように辛くなく柔らかで角の取れた優しい味わい。
普段は香りと味のバランスを考えて複数の産地の蕎麦をブレンドして使用すると言っておられた。
蕎麦w提供されたあとに名人がご挨拶に来られて口上を述べる。昨年首の骨を骨折したけどどういうわけかそれが繋がって、最近ボチボチ蕎麦を打っているとのこと。25年間ずっと大和屋さんで新そばを打ちにきているとも言っておられた。
デセールは冨有柿と栗羊羹。羊羹には岩塩がパラリ。
何を食しても上質でいい時間を過ごすことが出来ました。
大丸心斎橋北館13階