3月11日に私どもの料亭部門である懐石料理徳 住之江本店で「なにわ懐石とロゼワインの会」が執り行われた。監修として阿倍野区にあるこだわり酒店のエスポアドイの土井誠氏に来店いただきワインの製法や料理との相性、楽しみ方を教えていただきながら和やかに楽しい時間を過ごすという趣向である。 ロゼワインは一般にテーブルワインの印象があるが日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザーである土井氏と私どもの総調理長の多田稔彦の事前の充分なる打ち合わせと素材との相性の実験を繰り返しワインも料理も相乗効果でより美味しくなる最高のメニューが出来た。 今回用意させていただいたワインはフランス、イタリア産を合わせて5種。今回は全てロゼワインで取り揃えてみた。この趣向のワイン会はたぶんあまりないと思う。 料理の素材、調理法にドンピシャのものをセレクションしていただいた。。同じワインでもよく冷やしたものと常温を飲み比べると味わいが変わるのが実に面白い。。 桜と梅の時期に愛らしいピンクのボトルは実に春を感じさせる。。 先付けは桜粥。。。桜の花の塩漬けで香りをつけたやわやわに炊いた粥に少し硬めの温泉卵とスモークサーモン、春の山菜のこごみをあしらったもの。サーモンの塩気と粥の相性と卵黄のコクがうまく調和されている。ぐちゃぐちゃに混ぜてスプーンでいただきそこに炭酸を流し込む。。ワインはイタリア産のピノ・ロゼ・スプマンテ・ブリュット。この辛口のスプマンテは見た目も愛らしくまさに春を感じさせる。。。最後までこのスプマンテで通してもよさそうであった。 持続性がありきめ細かな泡立ちも長く続きいい感じのボリューム感とバランスの良い酸味もあり個人的には大好きなスプマンテである。 前菜は洋皿で提供。。ワイングラスとの見た目のバランスを考えたらしい。ポシェしたさざえに大根おろしを加えリンゴ果汁と土佐酢を合わせた餡を掛けたものはデリケートで優しい酢加減が絶妙であった。 鯛の身を軽く酢で締めたものに胡瓜のあくをとって味の加減をし、すり下ろしたものとビーツ(赤い大根)をおろしたものを乗せたものもお酒にジャストフィットである。 鰆のきずしは弱く加減した酢と皮をあぶっているのでワインと全く喧嘩をしない素晴らしいマリアージュを奏でる。春キャベツと煮穴子を博多帯のように重ねたものは火入れも完ぺきで上に乗ったサワークリームは山葵すり下ろしを加えてアクセントをつけたと言っていた。。。不味いわけがない。。。。 うちの料理長なかなかやるとひとりごちする。。。 懐石料理の華である煮物椀はうすい豆をすりおろした鶯仕立て。鰹出汁もしっかり効いた気合の一品。具はお約束の蛤の真丈であしらえとして、蕨、菜種、木の芽という春野菜で身体にすべてがしみこむような和食ならではの献立である。。 造りは大根のかつら剥きに隠されて登場。。中身は九州産の質のいい鰹をおろしポン酢で。ヤリイカの糸づくりは花弁の上に乗った炭塩にて。。細魚の昆布締めも生臭さをまたく感じないええ仕事ぶりであった。 お酒はボージョレロゼで魚料理にぴったりクリアーでなめらかな飲み口とたっぷりした果実味は今までのロゼワインの概念を覆すものであった。酸の余韻も実にトレビアンである。あえてお造りに醤油を使わないところがポイントと言っていた。 会場では土井氏を中心にワインの美味しい飲み方や保存の仕方などあちこちから質問やワインにまつわる楽しい話題満載であった。 焼八寸も洋皿で登場。。。甘鯛を白酒と酒粕で合わせたものを塗りながら低温で加熱したものは身がホロホロのふわふわで参加者一同が絶賛のスペシャリティーであった。。筍木の芽あえは木の芽味噌を少なめにして独活をあられ状にしたものを添えた。。これも計算済みと言っていた。 白魚の酒蒸しは行儀よく並ぶように白魚を半紙で挟んで過熱をする。加減をした梅肉がアクセント。 玉子を白身と黄身に分け調味してそぼろ状にして合わせ菱形に包丁した村雨玉子もしんみりとした味わいである。。鯛の皮を干したものを海苔に付けて揚げたものは見た目よりも手間のかかる逸品。 お酒はここでタベル・ロゼが登場。タベル・ロゼは三大ロゼの一つで見た目はピンクというよりかなり赤い。 口に入れるとふわっと苺やサクランボのようなフルーティーな甘味としっかりした風味が広がりあとで滑らかなタンニンを感じる。 ブラインドで飲めば赤ワインと間違えそうな感じ。きりっとした辛口のしっかりした味。 タベルってところはロゼのみを作っている地域と聞き及ぶ。葡萄の品種を8種類くらいミックスして(しかも、通常赤ワインに使う葡萄と白ワインに使う葡萄が一緒に)発酵させるらしい。そういわれると複雑な味に思えてくるのが不思議。冷やしたほうがうまい。。。 進肴として長芋の釜に乗っかった車エビと軽くあぶられたレアのホタテ貝。。芽キャベツのあしらいと芽キャベツをつぶしてつくったソース、車エビの頭でとったソースをかつお出汁で伸ばした「ソースアメリケーヌジャポン」が敷かれていた。。。一見簡単に見える料理であるが長芋のシャリシャリ感を残した火入れやエビの臭みを全く感じさせないソースなど見えない工夫と仕事が随所に感じられるいい仕事である。 もちろんワインとの相性は完璧なのは言うまでもない。 最後の料理は和牛を新筍のかつら剥きをしたもので巻いたものを湯葉で巻いて揚げたもの。。。 ややこしい仕事であるが牛肉の脂とエキスを筍で巻くことでさっぱりさせて湯葉揚げの食感で楽しんでもらうという趣向。。この料理にはシャトード・パランシュール・ボルドー・クレレフランスをもってくる。 ロゼワインなのにフルボディー。木イチゴの香りとこれも口に含むと「赤ワイン」と感じるほど余韻にフルーツの風味が心地よく漂う。。。 料理のあしらえは一寸豆を真空調理したもので外の皮までがやわやわで豆の味がしっかり残った仕事。 筑前煮はあっさりと仕上げて伊勢地鶏がアクセント。。。揚げものの口直しに筑前煮とは脱帽。。。 食事は伊賀で特別に作った釜にて福島県中通りのコシヒカリ。。 留椀は鯛の潮仕立てで鯛の骨からとった出し汁に葛打ちした鯛の身と鯛の子を調味して玉子で寄せた鯛の子豆腐、鶯菜に香ばしく焼き上げた鯛のヒレで風味付け。。。 デセールは3種盛り。豆乳プリンは豆乳の味をあえて残したらしい。クコの実もシロップ漬けにしている。 イチゴの下と桜の風味をつけたゼリー、プチトマトを甘く炊いてヨーグルトソースにからめたもので静岡産マスクメロンとの取り合わせ。最後のワインはデザートワインでマルサラ・フィーネ・ルビーノ・ドルチェで締める。アルコール度数も高く琥珀色がかったルビー・レッドと強い香りが特色。思ったよりも味わいは上品ですっきりとしている。 このワインが一番好きかも知れない。チョコレートとかでもかなり合うと思う。 このお酒は多分これからブレイクすると思う。。。 最後は心斎橋宇治園謹製の抹茶。。。女性でも持ちやすいように茶碗は小ぶりなものを信楽で特注。。 お酒を全部入れて会費10000円也。 お得なイベントとみんな大喜び。。 その姿を見て私も喜ぶ。 次回はフレンチとの融合を考えている。 和洋折衷ではないよん
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プロフィール
店主 鷺岡 和徳
外食歴40年。家に帰らず食べ歩く店主が綴ります。食べ次第更新中! 大阪・関西を中心に全国、時には海外の現地グルメも投稿。