その日の晩御飯は今日本で一番の和食店といわれている「たか田八祥」へ行く。 この店は辻調理師学校やプロが勉強するために密かに訪れる料亭として有名。 岐阜駅近辺に本店と割烹料理店合わせて4店舗あるらしい。 すべての店が少人数対応で今回伺った本店も1階が小部屋が4つ2階が35名くらいの広間となっていた。 予約時間に伺うと小さな店なのに主人と若い着物を着た女性スタッフが10名ほどのお迎え。 なんとも気持ちのよい挨拶をされ少し気恥ずかしい気分に。 さて、料理は懐石8400円、10500円、12600円、15750円となっているが今回はみんなで 給料から積み立てをしたので本懐石1人前35000円をお願いする。もちろん食材は最高のものらしい。 先付けは泡状の大根?とその下に乳腐とあられに切った長いも。その上にイクラと柚子をかけたもの。 この器は空洞になっておらず上から2センチで底になっている。 見た目も楽しめる演出となっている。もちろん味のバランスもかなり正確。 その後の料理を期待させるイントロはさすが。 続いての前菜は朱塗りの盆にばふん雲丹ともう一種類の雲丹を組み合わせ、底に塩雲丹を仕込んで ゼリーを上から流し、上質のキャビアを添えたもの、蒸し鮑はかなり大きなものらしく滋味深く蒸されていた。 こんなに旨い鮑食べた事ないと隣の同伴者は言っていた。そして渡り蟹と食用菊のコラボと焼き栗。 珍味中の珍味日本でこの店にしかないといわれる「鮎のなれ寿司」はフナ寿司ほど癖がなく日本酒と相性抜群だった。ごりの唐揚げは生きたものを揚げたらしくひれがぴんと立っていた。 味は旨いに決まっている・・・・いきなりのカウンターパンチ これだけで参加者全員黙り込んでしまう内容。 続く椀盛は山中塗りの煮物椀に銀杏のしんじょ。これがふんわりしっとりしていて 味も軟らかなマシュマロを食べているかのような味わい。その中に柔らかく炊かれた銀杏が 秋の香りを格調高く出汁にマリアージュさせているのに仰天。 添え物は国産松茸の先の部分だけが丸まる1本。この松茸の歯ごたえと香りには みんな美味しすぎて笑い出す始末・・・ しんじょの上に乗った車海老もレアに火が入り吸い口の柚子も目に見えないくらい 細く切られて究極の煮物椀を見せ付けられたというショックがあるものの 美味しすぎて食べてる間中笑いが絶えない。この松茸は笑いキノコかと思うくらいだった・・。 続いての造りも圧巻・・・本マグロのトロ(これも究極の素材)は脂が乗りすぎているので おろし醤油で。本クエとあおり烏賊は泡醤油でいただいた。 泡醤油は合わせ醤油にゼラチンを入れて泡立てたもので軽い食感が刺身にぴったり。 別皿で大ぶりのボタン海老が氷で冷やされて出てくる。これも泡醤油でいただく。 お酒を焼酎に変えてお凌ぎは蓋つきの四角い箱で鰹のたたきの寿司に鱧を叩いて揚げた 鱧煎餅。驚きは蓋を開けると煙がもくもく出てくる趣向。 鰹を藁で燻すので出すときにその藁の煙を器に閉じ込めるらしい。これには一同びっくり これは平成の浦島太郎の玉手箱かと思う私だった。 大きな焼き物皿に葉っぱに包まれた鮎が3匹。それぞれの皿に取り分けていただく 長良川ではなく吉田川の天然鮎で落ち鮎ではなくここまで大きな鮎は はじめて見た。味のほうはいわずもがな・・・ 中鉢は「名物ハリハリ」と書いてあったが。大根の千切りを丸めているのかと思いきや 糸のように切ったジャガイモをさっと湯がいて質のよいバター味の出汁にくぐらせて とびっ子を少し混ぜたもの。サッポロポテト塩バター味のようだが最高に澄んだ上品な味加減 には一同脱帽。この料理を考える想像力はかなりのものとお見受けする。 強肴は名残の焼鱧と鱧しんじょ(中には鱧の子を混ぜ込んでいる)敷きソースに玉ねぎの 香りがいっぱいの酒盗が入ったえも知れぬコクと風味ととろみのある何でもあいそうな 和風ソースがたっぷり。お腹も張ってきたがパスをするのはもったいないと完食。 続いての肉料理はステーキ2切れ。つけあわせは刺身コンニャクをブロッコリーをつぶしたソースであえたもの 肉は口の中に入れただけで溶け出し3回噛むと口の中から消滅。 こんな体験は初めて。最高級の肉の種類とのこと。焼加減は表面は炭焼きでパリパリ。 中は超レア。初めての体験に目玉が半分飛び出しそうになる・・・ 酢の物は柔らかく炊いた冬瓜の上にすっぽんのえんぺらが一枚。その上には茗荷などの 彩り野菜。特筆すべきがソースですっぽんの出汁をベースに卵黄でコクととろみと まろやかさを出す・・・・これも本当においしすぎる・・・今風の言葉で言えば劇ヤバ・・ ご飯は「本家海苔茶漬け」丸めたご飯の上に香ばしく焼いた鯛の切り身と山葵と三つ葉 透き通るような加減の出し汁と生のあおさ海苔。ご飯を崩しながら海苔と鯛の切り身を 味わう。香の物も地元の守口大根、赤蕪、胡瓜、茄子、昆布と彩り豊か。 まずいわけがない。 水物が巨峰(ゼリーにしている)細かく目を入れたマスクメロン。そのうえにマッチ棒の半分の太さに切られた 梨(白く横になっているもの)この梨にはびっくりした・・・ それに蜂蜜ゼリーがかかっている・・ その隣はミルクをエスプレッソマシンにかけ泡状にしたものの中にミンチにして凍らせた白桃。 これもバリうま・・・・ 見た目、素材、手の掛け方は究極といってもいいくらい・・・岐阜県侮れず・・ 主人の高田晴之さんは過去に料理の鉄人に出演したときに審査員に「歴史に残る料理」と評されたと言われる。 今回は本当に勉強になった。お店全部満室で45人しか入らないらしい。 しかし板前は15名、仲居はレギュラー10名。この手厚い陣容はすごい・・ 飲み物込みでトータル一人5万円也。 年末宝くじを当てて又来ようと話をしながら、この料理とサービスを参考にして元を取ることを全員で誓い合って店を出た。
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プロフィール
店主 鷺岡 和徳
外食歴40年。家に帰らず食べ歩く店主が綴ります。食べ次第更新中! 大阪・関西を中心に全国、時には海外の現地グルメも投稿。