新幹線ひかり号に乗って静岡の表記の天ぷら店を訪問。静岡駅からタクシーでで10分。日本一予約の取れない天ぷら店と言われるが今回たまたま伺う機会をいただく。

お店は有名な静岡浅間神社に隣接。歴史を感じさせる凛とした美しさのある木造平屋建ての建物にびっくり。

30分前から入れる待合があり時間になるとカウンター席に移動。入店時に帰りの新幹線の時間を確認しタクシーを手配いただける。客はほとんどが新幹線を利用されているとのこと。

待合でお茶が供される。待合の真ん中には3トンの富士石が鎮座。

客席は檜のカウンター席が8席のみ。料理代金はおまかせコース一人44000円サービス料別。この日はお酒のペアリング付きの特別イベントだったので会費として66000円とのこと。

サービス担当は女性ソムリエさん含め3名。カウンターにはご主人と調理補助のスタッフが4名。下拵え含めほとんどの調理は目の前で行われる。ご主人の丁寧な解説付きでかなりのライブ感あり。

使用する食材は事前にプレゼンテーション。駿河湾で獲れる朝取れの鮮魚と地野菜に焦点を当てて提供される。特に魚は焼津のレジェンド鮮魚店の「サスエ前田魚店」の協力でその日穫れる最高の食材を天ぷら用に仕立てて供される。
天ぷらの粉は薄力粉を使用。事前にふるいをかけてマイナス50℃まで冷やす。それを2℃の水でしっかりと溶いて使用するとのこと。油との温度差で瞬間的に水分が揮発し軽やかな仕上がりになるらしい。コースの途中で粉を頻繁に変える理由が理解できた 油は太白胡麻油と焙煎胡麻油をブレンド。鍋は2つで高温用と低温用を使い分ける。

コースの扉は新玉ねぎとフェンネルの擦り流し。胃がすっきりと目覚めるのが実感できる。
一皿目は熟成させて55℃の低温油で素揚げした35キロサイズの焼津産のクエを刺身で供される。皮が油でゼラチン化し、ねっちりした弾力のある筋肉質の身が特徴。白身の甘い脂分と水分を抜いて凝縮された旨みが口の中で迸る。
2皿目は油通しした伊勢海老を頭の味噌であえたものとエボタイ。あしらえはコシアブラと田芹。天ぷらは大量の鬼おろしを入れた天汁と2種類の塩でいただく。

天ぷらの扉は太刀魚から。粗めにおろしたたっぷりの大根おろしに冷ました天汁を入れて待つとその上に直で熱々の天ぷらを置いていただける。油で揚げたと思えないくらいふわふわに仕上がっていて汁を吸っても身の軽さと旨みの強さが変わらない。
朝詰みのインゲンもフレッシュな青味と旨みが炸裂。ハリイカは中が完全レアに揚げられる。油分を一切感じさせない丸茄子は水分が抜けてふわふわ状態。
白甘鯛は油の中でゆっくり膨らんでいく。小さな鱗のカリカリ感と蒸し焼き状態のホワホワ食感と凝縮した旨みに声が出なくなる。醤油ベースのタレを鱗部分にさっと塗って香ばしく仕上げる。地元産のとうもろこしには生のとうもろこしが添えられてハーモニーと食感の異なりを楽しむ趣向。

5月20日解禁の清水興津川の日本一早い鮎。骨を抜いて供された後で頭と背骨を唐揚げにしていただける。

こちらのお店のレコメンドメニューの鯵の天ぷら登場。駿河湾の定置網で獲れた選び抜かれたもので脂の乗りは当然で絹のような食感。当然のことながら臭みや癖は一切ない。下処理の妙があると推察される。
口直しの野菜サラダには生の唐墨やベビーコーンの髭が入り、魚の骨を煮出して作られたドレッシングが添えられる。
この時期ならではの朝取れの地元のベビーコーンは調理寸前に下拵えをする。ヒゲも一緒に揚げるのでとても香ばしくて甘味が口に広がる。
珍しいハナダイも魚の個性に負けないように完熟トマトの上澄み液を合わせた天汁につけて供される。続いて半年くらい熟成させたメークインを皮ごと揚げる(写真なし)。
鬼カサゴは身を揚げた後でネパールの山椒にしばらく潜らせて冷まし、香りづけをしてから供される。魚の個性をさらに相乗的に感じさせる工夫に驚かされる。蓮子鯛は品のある甘みと鼻に抜ける香りが特徴。山葵おろしを付けていただくと魚の味わいとの相性が良くなる。

ご飯は建物の外で薪を使ってベテラン調理師が炊き上げる。煤だらけの釜を持ってプレゼンテーション。米も当然地元産を使用。

海鰻の天むすは一口サイズ。その後の食事は天丼、天茶、天ばらから選ぶ。このかき揚げでやっと海老が登場する。どの天ぷらもその食材を使用する理由があり、最もおいしくなるように昇華させ、全ての仕事に明確な論理と哲学があることに敬服する。サービスの係の方の気配りも素晴らしい。

食後は別室(茶室)に移動してご主人自ら淹れてくれるお茶(煎茶)とお菓子をいただく。580年前に作られた江戸城築城で有名な太田道灌作成の広大で幽玄な趣ある庭を見ながらオープンエアーの中で静かで贅沢な余韻を楽しむことができる。入店から退店まで全てを「体験」として設計されていることに感動する。

お酒もワインを中心に10種類くらいいただきました。このワインのセレクションの精緻さにも感動しました。

帰りに神社を参拝して帰阪。
静岡県静岡市葵区丸山町12−2
054-295-7791
12:30~ 18:00~
日曜日定休