びすとろぽたじぇ

1970年代にヌーベルキュージーヌを確立し、世界で最も有名な料理人と言われるポール・ボキューズからその技術を学ばれた肥田順シェフのお店。こちらのお店は以前は本町にあったらしいが本年に私の自宅近くに移転されこの日は友人と訪問する。

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アラカルトメニューもたくさんあるがプリフィクスになったコースメニュー6000円がお得でお薦めらしいのでそれをお願いする。アミューズはとうもろこしの冷製スープ。ポタージュワシントンというらしい。透明感のある滑らかな味わいは暑気払いにぴったり。

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前菜は名物の自家製ハム。しっとりした舌触りと口一杯に頬張るとハーブの凝縮された豚肉の旨みを感じる。ぱさつきは全くない。低温でじっくりと旨みが逃げないようにボイルされているのと水で塩抜きされていないのが秘訣かと推察する。無塩バターを乗せていただくのはフランス流。付け合わせはオレンジ風味でレーズンが入った人参のサラダと根セロリのサラダ。

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マリネされたサーモンとトマトのソルベ。滑らかでひんやりしたソルベがサーモンと素晴しい相性を見せる。

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どうしても食べたくて追加した前菜はシェフのスペシャリティーのフォワグラのテリーヌ。よくあるテリーヌ型ではなく専用の壷に入れて焼き上げてそれをこそぎ取って大皿に盛りつけてくれる。見た目の華やかさはないけど味わいはかなり濃厚で特有の甘さと旨みが半端ない。今まで食したフォワグラ料理の中で最高に私の口に合う逸品だった。添えられた無花果と少し甘めの白ワインを合わせていただくと美味し過ぎて目眩がしそうになった。

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魚料理はすり身を蒸し上げたはんぺん状のものにソースアメリケーヌをかけたもの。フワフワでしっとりした食感のすり身のはパサつきが全くない。濃厚だけど雑味や癖のない透明感のあるアメリケーヌソースも味わいが深く、あっさりした魚のすり身に絡めていただきシャルドネと一緒にいただくと頭の中をマルセイユのル・ヴュ- ポ-トの風が吹き抜ける気がする。

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泉南で獲れたエイのポワレ。北海道や青森でよく獲れると聞くが泉南のものは初めていただく。作り方はわからないけど丁寧な下ごしらえと骨抜をされたエイはアンモニア臭はまったくなくしっかりしっとりとした火入れしたものに焦がしバター、レモン汁、ケッパーのソースを合わせたもの。

日本では食すことが少ないがノルマンディーやブルターニュ地方の名物料理。パリのレストランのメニューには必ず載っている。見た目通り最高のエイ料理だった。

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鴨料理はグリーンペッパーソース。しっとりと焼き上げられた鴨肉にビーフストック、白ワイン、生クリームとグリーンペッパーで作られた(多分)ソースとの相性がとてもいい。お薦めのピノノワールとともに楽しむ。あしらえの野菜も丁寧に作られていてカルダモンの香りの人参や三度豆もとても美味しい。

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羊肉に鶏肉のすり身とキャベツ、様々な香草を合わせたものを巻き付けて蒸し焼きにしたもの。微妙な火入れが必要でなかなか手のかかる面倒な仕事で最近の調理人でこのような料理を継承する人はほとんどいないと仰っておられた。すり身部分もしっとりしてて絶妙に火入れされた羊肉と一緒に味わうと味の濃淡をしっかりと感じることが出来てトマトベースのソースとシラーのワインで最高のマリアージュを見せる。

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ジュラスの40年をいただく。アルマニャックだけどかなり上品な甘い香りとスパイシーな味わいにうっとりする。

 

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デザートは好きなものを好きなだけいただける。
グレープフルーツの皮のコンフィチュールやグレープフルーツのコンポート、プリンのようなもの、自家製フィナンシェ、マンゴーのタルト、真っ白のコーヒー風味のブランマンジェ、チョコレートケーキ、シャーベット2種、グレープフルーツのカモミールシロップ漬けなど・・

現在はほとんど食べることが出来ない古典的なオーセンティックなフレンチをいただける希有なお店。何を食しても突き抜けた美味しさがある。コスパも素晴しく店も厨房もとても美しい。出来ればカウンタ−でシェフの調理を見ながら食すことをお勧めする。素敵なテラスもあって使い方はいろいろ。

先日レストランひらまつでポールポキューズの総料理長クリストフ・ミュレール氏が来日し晩餐会の誘いを営業の方にいただいたが気が乗らないので遠慮した。しかしながらリヨンにあるボキューズには一度は行ってみたいなと思う夏の夜でした。

大阪市西成区玉出中2-13-31
06-6651-9568

びすとろぽたじぇビストロ / 玉出駅塚西駅東玉出駅

夜総合点★★★★ 4.0


カテゴリー 玉出, フレンチ |

鮨 千陽

ミシュランのビブグルマンを最近取得された福島にある有名店。こちらは中央市場の前にある飲食人大学を経営する人材派遣会社の運営。最近はメディアの取材も多く予約がなかなか取りにくい。

「飲食人大学」は1年生の料理学校のカリキュラムを3ヶ月という短期間で現場で通用する技術を身につけることが出来るという短期集中型のまさに世の中が望んでいた学校である。寿司を含め和食の修行は劣悪な労働環境のもと精神修養を中心とした前時代的で属人的要素の強い「見て学べ」という慣習が根強く残り、それが和食料理人や寿司職人を志す人の障害となっていることは周知の事実である。

こちらの学校はそうした封建的な古い慣習に風穴を開け、今では多くの女性寿司職人の卒業生を輩出している。こちらの料理人大学の寿司専科は3か月で60万円(キャリアアップ助成金の対象なら30万円)のカリキュラムで江戸前寿司の実践的なノウハウを教えてくれると言っていた。
その卒業生が働くお店がこちらで、1階席が3500円コース、2階席が7000円コースと分かれていて今回は男性板前さんがいる1階でいただいた。(2階は女性職人さんです)

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7席の店内は木のカウンターで板前さんとの距離がかなり近い。ビールで乾杯をして前菜が無花果の胡麻クリーム掛け、甘海老の5杯酢掛け、魚介の白和え。手作り感もありまずまずである。

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小さな蓋付きのガラスの器の中にはフカヒレの炊いたもんが入る。かなり気の聞いた演出である。

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刺身は鯛とインド鮪。私は鮪が苦手なのでアコウに変更。鯛は養殖であったが上質なり。

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こちらの板前さんも3ヶ月学校で勉強して1年目と言っておられた。手が遅く包丁の使い方がまだまだぎこちないけど熱心さや丁寧な所作に応援したくなる。素直で擦れていない応対に好感が持てる。

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剣先烏賊を薄くすいて刻んで握る。切り方一つで甘味が増す。塩と酢橘でいただく。

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昆布〆にして水分を飛ばした今が旬のイサキは脂がしっかりとのってとても美味しい。

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漬けにしたインドマグロの赤身は辛子が添えられる。

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鮪が苦手な私には目板かれいを出していただいた。気遣いがとても嬉しい。日本酒もいろいろな種類のものが用意されていて好みを言えば誂えていただける。

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脇を固めるスタッフさんも学校の卒業生や入学予定の方で一生懸命さが伝わるのが感じがいい。

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大振りの小肌の半丁付け。〆具合も御上手。江戸前の仕事をちゃんと踏襲している。

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小さな雲丹丼には3杯酢のゼリーがかかる。ミョウバンの味がしっかりする比較的廉価の雲丹だけどひと手間かけることで癖が気にならなくなる。

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レアに煮込んだ肉厚のホタテ貝柱を炭火でさっと炙って潰して握ったもの。古い江戸前の仕事で関西ではほとんど見たことがない。専用の甘辛醤油との相性も良くてこれが私的には今日のナンバーワン。

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酒器はすべてスガハラガラス。光の模様が美しい。ルネラリックを思わせる。

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好物の海老は大振りの冷凍ブラックタイガー。仕事を施すことで活車エビを超える味にしたいと言っておられた。玉子のおぼろを中に鋳込んで一方には甘エビのおぼろ、もう一方には小海老のおぼろをトッピング。身が分厚くて食べ応え満点。プリプリの海老とおぼろの味で食べ比べる楽しさを提供。

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煮込まれた穴子は笹の葉に乗せられて炭火で炙られて供される。北新地の名店「平野」と全く同じ手法である。食したときにふわっと笹の香りがする。

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最後はカステラのようにフワフワに焼かれた玉子。もう少ししっとりした方が美味しいとは思うが許容範囲内。

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最後の汁物もかなり出来が良い。

キャリアが1年未満の調理人(多分調理師免許は取得していないと思われる)がここまで出来るということに感動がある。つまり単に美味しいとか美味しくないとか言う問題ではなく本格江戸前寿司のハードルをここまで下げたこちらのお店に敬服する。  

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最後に少し残っているお酒を見て玉子の端っこのへたの部分を切って出してくれた。新地の高級店でもなかなかしてくれない気遣いに心を掴まれる。。

大阪市福島区福島5-12-14
06-6450-8685
営業時間 18:00~23:00

鮨 千陽寿司 / 福島駅新福島駅中之島駅

夜総合点★★★☆☆ 3.5


カテゴリー 福島, 寿司 |

そばがき屋 ぐーちょきぱー 7月

先月の昼になんとなく訪問し衝撃的な感動を受けた表記のお店を再訪する。夜にゆっくりと日本酒をいただきながら美味しいそばがきをいただくため今回は自宅から天王寺を経由して初めて乗車するJR大和路線で東部市場前という駅で降車して徒歩10分。

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東住吉区の端っこのかなり辺鄙な場所にこのような瀟洒な店があるということ自体がユニークでお店の細部を見れば見るほど見どころ満載のセンスの良さが伝わってくる。接ぎ木で作ったテーブルの横の壁にはこちらの女性店主が修行された大正区の伝説の名店「凡愚」のご主人からいただいた絵が飾られる。古材を使ったドーム型の天井の意匠も見れば見るほどよく出来ている。お店のあちこちにさりげなく飾られたものがお店に自然に溶け込んで用の美を形作る。

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よくありがちな「可愛い〜」という褒め言葉ではなく、品よく自然に見える内装はいい勉強になる。食器も友人の作家さんに作ってもらったりオールドガラスを骨董市で買ったりしたり店主のお母さんが趣味で集めた古物と聞き及ぶ。棚には古九谷や古備前の器がさりげなく飾られている。

最初にサッポロ瓶ビールでのどを潤してから店主セレクションの日本酒とともにお任せコース仕立てでいただくことにする。

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前菜の人参のマリネには赤玉ねぎのみじん切りと煮豆が添えられる。茄子のオイル漬け、シシャモのみりん干し、板山葵の盛り合わせ。地味だけど上質感溢れるものばかり。朱塗りの器も美しい。

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さらっとした福井の辛口のお酒がこの時期にぴったり。続いて看板商品のそばがきを所望。蕎麦粉を目の前のヨーロッパ製の製粉機というかミルで挽いてくれるのだが挽き加減を5段階で選ぶことが出来る。その荒さで出来上がりの食感と味が異なるのは前回のランチ訪問で確証済み。

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蕎麦は福井県の丸岡産のものを使用。今回は一番滑らかな1番を所望する。細かく挽かれた蕎麦粉を小鍋に入れて水と一緒に練り上げる。

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出来上がったものを擦りたての山葵、塩、葱醤油でいただく。挽きたて出来立てのそばがきはフワフワのトロトロで、世間一般的にイメージするそばがきのもそもそ感や嫌なネッチョリ感は全くない。打ち立ての蕎麦よりも個人的には美味しいと思う。山葵や塩、醤油を付けることで甘味が更に引き出される。
透明感のある洗練された蕎麦の香りが飲みこんだあとに喉の奥から感じられる。

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お酒のあてに豆腐の味噌漬け。。。不味いわけがない。。器も素敵過ぎ・・・

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昆布に蕎麦味噌を塗って焼き上げたもの。日本酒を中毒になったように飲みまくる。・・・魚の形の器は和歌山の作家さんのものらしい。

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味噌の残りがへばりついた昆布ははさみでカットしてくれるのでそれをしがみながら日本酒を更にいただく。。食事内容もさながらお店の内装や供し方までが素敵すぎる。こちらの女性オーナーの人柄と温かさとセンスの良さが空間すべてを支配する。

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続いて3番目の荒さで挽いて小鍋で練り込んで作ったそばがきを油で揚げた「揚げそばがき」も初めて頂いた。。素朴で優しくて雑味がなくて蕎麦独特の香りがそよ風のように脳幹を刺激するが決して嫌な感じではない。これだけを100個くらいいただきたくなる欲求にかられる。

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ミネラル感たっぷりの白ワインを揚げそばがきにあわせる。夏の夜にぴったりのマリアージュ。グラスはアンティークでお酒を入れると更に美しくなる。

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メインディッシュのそばがき鍋が登場。。鴨肉や茸も入って身悶えしそうになる美味しさ。今年食した食事の中でマイグランプリなり。

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細かい説明は不要で上質の昆布と鰹節と鴨肉と出来立てのそばがきの取り合わせはこれ以上はないと思える食材のコンストラクションである。

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店主お薦めの純米酒を炭酸で割ってミントを入れていただく。お鍋にぴったりの夏酒なり。

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鍋の出汁を少し残してそこに発酵玄米を投入。玄米を炊いて60度で寝かせるとモッチリした食味になる。木村拓哉やローラや石原さとみさんが食べているので有名。これを雑炊に使用するとは何とも贅沢な〆であろうか。

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人参のぬか漬け。。。御上手です・・

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デセールは蕎麦湯のシャーベットにマーマレードを乗せたもの。どこまでこだわる・・・楽しくて美味しくて飲み過ぎて、まさに桃源郷のようなお店に大満足。。

前回ランチタイムでいただいた記事はこちら

大阪市東住吉区杭全8-6-4
06-7710-1913

そばがき屋 ぐーちょきぱーそば(蕎麦) / 東部市場前駅平野駅(JR)

夜総合点★★★★ 4.5


カテゴリー 東部市場前, 蕎麦 |