そばがき屋 ぐうちょきぱー【大阪市 東部市場前】

今から17〜18年位前に大正区の泉尾という辺鄙なバス停しかないところで「凡愚」という個性的な蕎麦屋が開業。廃屋のような外観で入り口には大きな犬がいて週の半分は休みで天井は卵ケースでできている意味不明の店だった記憶がある。数年後にマスコミで取り上げられてあっというまに大阪を代表する蕎麦店となる。

驚くような太さの蕎麦を塩で食したりどういうわけか天野酒と早寿司があったり、店のご主人は元カメラマンで奥さんはデザイナーなんだけどいつも自然体で偉そうじゃなくていい空気のながれる空間でゆったりと真面目に作られた蕎麦をいただくのがとても楽しみだった。あまりに繁盛しすぎてここ8年くらいご無沙汰であった。しかしながら昨年8月に和歌山県伊都郡かつらぎ町上天野という里に移転され新しい凡愚として「あまの凡愚」を始められたと聞き及ぶ。

その大正のお店で10年間ずっとホール担当をされていた女性が東住吉区で関西で初めての「そばがき」の店を始められたと聞いたのでランチタイムに訪問する。彼女は開口一番に「凡愚」のそばがきに魅せられて始めたと言っておられました。

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場所は杭全の住宅街でかなり判りにくい辺鄙な場所。近くにコインパーキングはない。個性的な暖簾のデザインは店名のぐーちょきぱーを表しているらしい。駄菓子屋のガレージを改装した感じで入口のレトロなガラス戸もいい味を出している。気の温もり漂う店内はゆったりとしたカウンターが10席。テーブル席が2つ。

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デザイン性が高くて手作り感溢れる内装は知人の大工さんにお任せしたと聞いたがかなり計算されたカッコいい造りになっている。ドーム型天井が印象的。

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白い壁の店内は趣味のいい絵などがさりげなく飾られる。ちなみにこの絵は昔に凡愚にかかっていたものだったと思う。そばがきは蕎麦粉に湯を加えて加熱して箸やへらで手早く混ぜて粘りを出して塊状にして食す保存食のようなもの。福井県などの蕎麦の産地では子供でも作れるので昔はおやつの定番だったと聞き及ぶ。こちらのお店でも餡やきな粉と一緒におやつとしても提供されている。

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メインのそばがきは醤油でいただくか餡子と黒蜜でいただくかを選び、蕎麦粉のひき具合を選ぶシステムになっている。1番から5番まで選べて、細かくひけばトロトロになり荒くひけばつぶつぶが残る野趣溢れるものとなる。その他にもそばがきを付けていただく鴨汁や出汁巻などのおつまみ盛り合わせなども取り揃えられている。凡愚と同じく日本酒もあります。

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ランチタイムのお得なセットメニュー。選べるそばがきに鴨汁、キャベツの胡麻和え、酵素玄米(発酵玄米)、デセールにそばシャーベットがつく。この日はこちらを所望する。

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食器も陶器は和歌山の作家さんに注文して作ってもらったり、古い朱塗りの器は店主のお母さんが骨董品集めが趣味で揃えられたのを使っていると言っておられた。かなり上質で趣味性が高いものばかりである。

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カウンタ−に飾られる野花も品がいい。しかしながらこの店の若い店主がこの花よりも明るくて快活で存在だけで癒される。

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最初に酵素玄米と漬け物とキャベツの胡麻和えが供される。これをいただきながらそばが気が出来上がるのを見る。酵素ご飯は玄米を炊いて60度くらいで保温をして数日間(この日は7日目と言っていた)置くことでモチモチとした食感となる最近は木村拓哉さん等の芸能人やモデルさんが愛用する健康ご飯でブームとなっている。キャベツは素朴な味で普通に美味しい。昆布に酸味を入れて炊き上げたものや自家製の漬け物はかなり贅沢な仕上がり。

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そばがきは今回無理を言って1番と5番の相盛りにしていただく。どうしても挽き方の違いで味と食感の異なりを見たかったので・・というと快く引き受けてくれた。ヨーロッパ製の電動石臼(ミル)で福井県の丸岡産の丸剥きした蕎麦をその場で挽く。

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小さな手鍋とへらで根気よく練り上げる。そばがきはお椀に蕎麦粉と熱湯を入れて自分で練る椀がきというのもあるがこちらは正統派の加熱しながら水分を飛ばし丁寧に練り上げる鍋がきで蕎麦粉のでんぷんをアルファ化させるので消化吸収もよくヨガなどの健康食として最近は注目されている。

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加熱すると粘りが出てくる。長く捏ねないのでしっかりと風味も残る。たくさんの客でも一つひとつ丁寧に練り上げる。

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出来上がったものを擦りたての山葵醤油でいただく。挽きたてのものをいただくんは初めて。一言で感想をいえばまちがいなく蕎麦の味を上回る。普通の蕎麦は練って切って保管して茹でるあいだに酸化や劣化がすすみ風味が落ちるがこのフワフワトロトロのそばがきは香り・味、共に蕎麦よりもしっかりとした味わいを感じる。山葵醤油を付けることで甘味が更に引き出される。飲込んだあと(10秒後くらい)にフワッとした蕎麦の香りが喉と鼻に抜ける。

時間をおけば少しずつ変成(澱粉化)して固くなってくる。味わいと舌触りも山芋みたいに変化してとても楽しい。

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続いて5番登場。細かな蕎麦の実の舌触りが特徴。女性からの注文がかなり多いと言っておられた。挽きたて調理したてのそばがきをいただくのが初めてということもあって日本酒が欲しくなるが我慢する。これも時間をおけば固くなりお餅のような食感でとても面白い。

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鴨汁は出汁がしっかりととられており凡愚を思い出させる。器の品格の高さもありビジュアルもかなり美しい。そばがきを少し残してかも汁に入れていただくとそばがきの甘味を更に感じることが出来る。

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デセールは蕎麦湯で作ったかき氷が登場。柑橘のコンフィチュールが乗せられる。勿論初めて頂く味わい。

次回は夜に一人で日本酒を飲みながらゆっくり味わう予定。ここ最近のスマッシュヒットのお店です。

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帰りに播磨町の森森舎でオーガニックフルーツを使ったミックスジュースのかき氷850円を食べて帰った。少し酸っぱくてとても美味しかったけど蕎麦湯のシャーベットに負けちゃったな・・・

大阪市東住吉区杭全8-6-4
06-7710-1913
11:30-14:00ラストオーダー
17:00-20:00ラストオーダー
定休日 日・月・火

 

大阪市 東部市場前 蕎麦

桃粋 6月【大阪市 難波】

気心の知れた友人とたまに訪問する法善寺にある居酒屋。法善寺の入り口近くのビルの2階で細い階段を上がって入店。客の年齢層も比較的高く上質な料理を比較的手頃な価格でいただけるのと早い時間からあいているのでとても使い勝手がいい。メニューも豊富で(この日はなんと150種)ほとんどのものが580円〜780円まで。この日はカウンタ−席を予約してビールで乾杯した後はお造り盛り合わせを所望。

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剣先烏賊、ネットリとした旨みと舌触りのある鯒の昆布締め、姫鮑、明石の蛸、鱧、鰯の紫蘇巻、生ホタテなどどれも季節感がある上質なものばかりでかなり嬉しい。居酒屋で供される刺身ではトップクラスと思われる。。

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活バイ貝煮付け580円も秀逸。濃い口醤油との相性がよくて身の甘味が引き出される。酒と塩で味つけした「酒蒸し」も好物。

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活穴子の塩焼き780円も皮の部分がジュワッと脂が染み出してうまい。価格以上の価値あり。厨房にはご主人含め3人。女性の若いスタッフの機敏な仕事ぶりにいつも見とれる。

端麗旨口緑川の純米酒は穴子の脂といい相性を見せる。

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河豚白子醤油焼980円は口の中に少し白子を残して日本酒を含むと何ともいえないマリアージュを醸し出す。究極食中酒と書かれた切れのある伯楽星との相性は抜群だった。

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徳島産の鮎塩焼き580円は養殖だけどしっかりと焼き込んでかなり美味しくし上がっている。天然鮎をすっかり焼き込んだものはよく丸かじりするがこのようにしっかりと肥えたものは骨を抜いて食す。

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骨を抜いたものを一口でいただくのが大好き。腸の苦みも尻尾の旨みも一緒くたんになってムシャムシャ食すことが出来る。原田の無濾過生原酒と一緒に食す。この酒はフレッシュ菜香りと力強い米の旨みも感じられながら酸が効いているので切れ味もいい。

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ホタテの殻に入った海鮮コロッケ680円はベシャメルソースの中にホタテや海老、いろんな魚や貝がたくさん入って上にかけられたソースにいいとても風味を感じる。

これは重厚で旨口の山廃天狗舞の山廃仕込と一緒にいただく。

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湯葉と山芋の山葵餡680円はまさに割烹の仕事。湯葉はパリパリで山芋はフワフワしてかなり美味しい・・餡の塩梅が完璧。時分時になるとお店はいつも満席。予約の問い合わせもひっきりなしに入る。居酒屋なので回転が悪いのはしょうがない・・・

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皮付きヤングコーン蒸し焼き580円は青臭く特にどおってことのない味。しかしこのような新芽のような野菜を食すと身体に活力が湧いてくる気がする。

この他にも肉・魚・野菜の料理がビックリするくらい揃っていてどれも食したくなるようなものばかり。喜川浅井さんや浅井東迎さんのような献立を約半額の価格で食せるお店といえば判りやすいかと思う。お店が小さいので予約は必須。

大阪市中央区難波1-6-4
営業時間 16:00~22:45
定休日 日曜・祝日
06-6211-1572

大阪市 難波 和食

ふぉーす 6月【大阪市 住吉】 【大阪市 住吉公園】 【大阪市 住吉大社】

時代が変わればお好み焼きを取り巻く環境もどんどん変わる。ワインもテーブルもある鉄板ビストロのようなものやバルのような店、「パセミヤ」のほぼ予約が取れない完全予約の店、Vin樹亭のようにメレンゲを立ててフワフワパンケーキのようなお好み焼きをワインとともにいただくお店、マヨネーズじゃなくて大量のタルタルソースをかけまくる店など今や多種多様。

しかしながら地元の表記の店は店主が昭和に修行をした伝説の繁盛店のレシピをそのまま守るコンサバティブお好み焼きのお店。この日は残業をしていた若手社員君を誘って遅掛けに訪問する。

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まずは名物のメガ生ビール890円。冷え冷えの巨大グラスに3杯分(1L)の生ビール。あてにタコを焼いていただく。黒胡椒がしっかり効いてビールにぴったり。

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最近お気に入りの貝柱の焼きそばを所望。上質な刺身用の生ホタテ貝柱を使用しているため焼いても縮まずしっかりした食感が残る。そばにホタテのエキスが移って旨み倍増。ご主人が今日仕入れたキャベツは水分が多いのでソースの加減を変えていると言っていた。

焼きそばは東通り商店街の創業65年(らしい)の「つる家」が大好き。ふんわり香る魚介出汁とフルーティーなソースは病み付きになる。3階の広間で飲み放題3000円くらいの宴会をした記憶もある。

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お好み焼きはイカと豚入りを所望する。 焼き上がったらお好み焼きの下にもキャベツを敷いて焦げないように配慮。 来上がってから食べやすいようにカットしてくれるんだけど力点を上手に使ったコテさばきが美しくてお好み焼きがほぼ潰れない。

生地はふわふわのとろとろ空気がいっぱい入っていてとても軽い。一日生地を寝かすが秘訣らしい。いくらでも食べれそうなバランスのいい食感。大きな紋甲烏賊がとても美味しい。

お好み焼きのおいしさはキャベツの質と切りかたがポイントとよく聞く。こちらでは劣化を防ぐ為に切り立てを使用し残ったものはナイロン袋で保管。
メガビールを飲み干したので続いて同じサイズのメガ酎ハイを所望する。

よく聞かれるがお好み焼きで個人的に好きなお店は南森町のかきおこで有名な「居酒屋ひなせ」、岸里にある「しんみどう」のシンミドウスペシャル、難波の「はつせ」や天満の「千草」はセルフなので地方の友人が遊びに来たときによく訪問する。東通り商店街の「美舟」は創業67年の年季が親父の顔に表れる。ブルースを聴きながら食べるお好み焼きも味わい深い。お好み焼きってカレーライスや焼肉のようにいまや国民食みたいなものなので美味しい不味いじゃなくて好きか嫌いかに分かれると思う。

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最後に今超人気の野菜炒めを所望。カットしたての玉ねぎキャベツ、人参と海老、鶏のせせり肉をしっかりと炒め、途中で出汁を入れて蒸し焼きにする、最後に目玉焼きを乗せて完成。ごちゃ混ぜにして食べると更にチューハイがすすむ。これで580円というのは破格の値段。このメニューはマストなり。店主一人なんだけどスーパスピードテクニックで仕事をするので客を待たせることはない。すべての商品が他店の7掛けくらいでコスパも文句なし。

*子供の頃、鍵っ子だった私は日曜の昼間に年の離れた姉が作るイカのお好み焼きを吉本新喜劇を見ながら食べるのが大好物だった。当時お好み焼きから飛び出たイカは姉がすべて食べるルールになっていて、ひっくり返すたびに自分のイカが少なくなると言ってよく泣いた記憶がある。今でもお好み焼きを食べに行くたび、生地をひっくり返すときにイカが飛び出ないかとドキドキする52才の初夏。

大阪市住之江区浜口西1-13-7  電話なし

お好み焼き ふぉーすお好み焼き / 住吉大社駅住吉鳥居前駅細井川駅

夜総合点★★★☆☆ 3.5

大阪市 住吉大阪市 住吉公園大阪市 住吉大社 お好み焼き