日曜日は早朝から夕方まで障がい者施設でボランティア。雨の中での重労働のあと、銭湯で汗を流して自宅で1時間昼寝をして嫁さんと口喧嘩してから表記の店を訪問。場所は阿倍野の王子神社の近くの路地を入ったところ。すぐ先には個性派カレーの「堕天使かっき〜」のお店。下町風情溢れまくりの昭和な感じのファザードと同様、店内も昔のドラマに出てくる大衆寿司屋そのまま。カウンター8席と小上がり2卓の店内。記録を調べると私も22年前からこちらに通っていることが判明・・・
昼ご飯が遅かったのでいつものようにコースではなく好きなものだけをアラカルトでいただく。寒かったので白鹿の熱燗とともに河豚皮とアンキモを所望。
河豚皮は普通な感じ。日本酒をいただきながらぼそぼそと食べているとご主人が「鷺岡さん(私の本名)、最近あなたのブログ見て店に来る人が多いんだよ〜」と東京言葉でのたまう。棚からメモを出して客から聞いた私の名前と職業とブログ名を記したものを私に見せる。指名手配されてるようでビックリ。ご主人がメモを取っているということはそんなには嫌がっていないということであろうと納得する。
酒蒸しされたアンキモも丁寧な仕事で上品な仕上がりで普通に美味しい。外国産の嫌な匂いは全くしない。甘めの熱燗と相性ぴったり。
目の前のカウンタ−の水槽には川蟹がわんさか入る。季節によって中に入るものが異なる。蟹のあとは琵琶湖の天然もろこ。そのあとは稚鮎や鱧が泳ぐ。
富山の島田一雄さんの獲ったもので10匹に1匹しかない大きな雌のみを仕入れると言っておられた。いわゆる松葉ガニのタグのようなものであろうか。川蟹の鍋は前日までの予約で仕込みにとても時間がかかるとの説明。
諸々の話を聞いていないのにご主人から詳しく説明いただく。何度もいただいているのに同じ話は毎回される。知らない振りをして「ヘー」とか言って話を聞く。まず生きた蟹を冷水で締めて失神させる。それをさばいて殻ごとミキサーにかける。それを裏ごして殻をとる。同じ事を3回くらい繰り返して丁寧に身だけを削ぎ落とす。手間をかけて取り出した生身を蟹味噌と卵のついた殻と一緒に鍋に入れて食す。
出来上がりのビジュアルは卵白のような感じ。蟹身は独特のコクと旨みがある。途中で殻や卵から蟹のエキスが出てきてゴボウや豆腐に蟹の味が移り出汁と相まって最高の滋味となる。上海蟹よりも味わいは上品(今年は上質な上海蟹は日本に入って来ないので最近は川蟹の相場も上がっているらしい)
握りの扉は大阪湾のハリ烏賊。熟成感もあり独特の旨みがある。中に鋳込まれた胡麻の香りが口の中に広がる。塩とスダチを軽くあてているので甘味が引き立つ。
脂がのりまくりでネットリした鯖の漬けは口の中で溶けまくる。あこうの昆布締めも味わい深い。〆ているので歯ごたえはないが後から甘みが来てそのあと旨味も広がる。刺し身にはそのままでも美味しい高級魚だが寿司には合わない。昆布締めにすることで魚の美味さが寿司飯を通り抜けることを防いでいる。
しっかり締めた大きな小肌。コノシロのサイズ。これはこれで美味しい。日本酒ととても良く合う。
カンパチは片面をしっかり炙って紅葉おろしでいただく。ビジュアルもとても美しい。焦げた部分の甘い脂が咥内にまとわりついてそれを日本酒で洗い流す。握りながらも魚の話や東京での修行の話など本当に愛想よく客の相手をされる姿に頭が下がる。出される料理が彼の説明でよりいっそう美味しくなるのは確か。
濃いめのたれでしっかりと煮込まれたハマグリは濃いめの煮詰めが更に上から塗られる。しかし見た目ほど辛くはない。蛤も東京で獲れるものが最高とされていて我々の業界用語で「場違(ばち)ハマグリ」と言われる九十九里や鹿島灘産の外洋性のものはハマグリではなくチョウセンハマグリと貝種が異なるのはあまり知られていない。スーパーで販売されているのは韓国・中国のシナハマグリ。三重でシナハマグリの種を輸入したものを畜養して国産として販売していることも多い。
名残の鱧は脂がしっかり乗ってふわふわしてとても美味しい。東京の寿司屋では鱧はあまり見かけない。その逆で山口県の寿司屋では産地ということもあり必ず出てくる。条例で山口県の寿司屋は鱧を出さなければならない・・・と決められていると聞いたこともある。
300gオーバーの大きな鮑を2時間煮込んで作る蒸し鮑。柔らかくて旨味たっぷりで寿司飯とも良く合う。提供する際にご主人が「ウチで一番柔らかい寿司ね〜!」と言いながら出される。この口上も約20年くらい聞き続けているのでほぼ物まねが出来る。(でもしない)
もう一度鯖の漬けをいただいてから最後に軽く炙られて提供されるこの店のスペシャリティである烏賊の印籠詰め。ヤリイカを使用する江戸前の古い仕事。この仕事についての解説も3分くらいあり世間でよくあるイカめしとの異なりをこと丁寧に教えてくれる。烏賊の胴体とシャリの間に白子が入り、両端はイカの卵が入る。レアに火入れされて甘味を増した烏賊の身とともに卵と白子の味と食感の異なりを楽しむことが出来る。
酒が残ったので秋唐墨を出してもらう。気分はフレンチのフロマージュのようなものか。当然自家製で手前からヒラメ、鮎、ボラの稚魚。卵の種類は季節によって異なる。まろやかな仕上がりのために冷蔵庫で塩漬けして冷蔵庫で干して冷蔵庫で保管。ここでご主人の唐墨談義が始まる・・・・気楽に美味しい寿司を食べて、価格もリーズナブル。あまから手帳編修の「関西寿司100選」のトップを飾っています・・・
ご主人の 名前は安田豊次、だから「すし豊」。いい店です。。
大阪市阿倍野区王子町2−17−29
電話:06-6623-5417
営業時間:17:00~24:00
定休日:木曜日