先日この日記で参加募集の案内もさせていただいた大人の遠足を滋賀の名店「比良山荘」で行った。 この店は個人的に毎年必ず行くのだが京都市内から車で40分、JRの堅田駅から車で30分という山深いところにあり、食事に行きたいけど交通手段がなあということをよく聞いていた。今回弊社のバスを出して大勢でいろんなお酒を持ち込みさせていただき(有償です)賑々しく鮎といろいろなお酒のマリアージュを参加者全員楽しむことが出来た。難波に夕方集合でそこから名神高速と湖西道路で約70分。渋滞にも巻き込まれずバスの中でのアルコールも手伝ってええ気分で到着する。 玄関先では女将さんとご主人がお迎えに来てくれた。土産のリクローおじさんのチーズケーキもいつも喜んでくれる。2階の鯉の泳ぐ池の横の部屋を貸し切りにしてもらった。真夏なのにクーラーもいらず澄んだ風が部屋の中を吹き抜ける。本日の参加者は建設機材レンタルさん、地元フレンチシェフ、空間プロデューサー、鰻屋主人、河豚卸さん、美人フードコーディネーター、自称サーファーさん、コンピューター会社さん、不動産会社社長、駄菓子屋主人さんの12名。 乾杯はキンキンに冷えたモエシャンドン・ブリュットインペリアルにてまず喉を潤して胃を活性させる、最初の座付は高級料亭でしか今はあまり見ない温じゅんさいの吸い物。生姜が効いていてお腹が温まる。このじゅんさいは秋田産らしい。 続く前菜は名物の鮎のなれすし、アマゴのうるかあえ、枝豆、卵の味噌漬け、猪肉の燻製、フルーツトマト、鬼しめじ、ゴリの甘露。これだけで参加者ノックアウト。 さっそく持ち込んだ天野酒の無濾過大吟醸をいただく。特に鮎のなれすしは熟成して旨みが凝縮されこれ以上の相性はないというくらい日本酒とのマリアージュを発揮する。 どの料理も完成度の高いものばかりで、単なる里山料理でない素材選びと素材への審美眼、技術の高さが理解できる。 続いて登場の鯉の洗いは清流を取り込んだ敷地内の池で半年以上泥を抜いたもの。 臭みも全くなく酢みその加減も完ぺきで「ああ夏やなあ~」と感じる瞬間。川海苔ジュレ寄せと芽紫蘇もいいアクセントになる ここで登場の鮎の塩焼き。大きな籠に盛られた鮎は見た目真っ黒焦げなんだけど徹底的に計算しつくされた焼き加減である。頭は唐揚げ状になっていて骨は全く気にならず頭からムシャムシャ行ってしまう。 皮目はパリッと中はホクホク。。持参した白ワインとともにいただくともうカウンターパンチを浴びたような衝撃。。。そのままでも十分旨いがトロトロのすっきりした蓼酢につけてもうまい。。。 比良山荘の前には、安曇川がながれていて、この川は日本でも少ない鮎が天然遡上する清流とのこと。 鮎は普通、川と海を行き来し生涯を終えるが、ここでは琵琶湖が海の代わり。春に琵琶湖から遡上する鮎は、夏のさかりの8月でも10~15mほどの小ぶりだが、そのぶん味が凝縮されるということらしい。 生きた鮎を串に刺すので飾り塩をしなくてもヒレが立つとお店の方が言っていた。何度食べても、上品な苦味、爽やかな香りと旨味が口一杯に拡がる。。。嫌な脂臭さは当然皆無で淡くきれいな余韻をしっかり残し、それをワインで洗い流す。。。夏の清流の精気をいただいているよう。嗚呼幸せ。。。この鮎を3回に分けて合計7匹いただく。 続いて出てきた2回目の鮎は器を変えてまさに清流を鮎が泳いでいるような盛り付け。。みんながどんどん手を伸ばす。ワインの種類を変えてそれぞれのマリアージュを楽しむ。部屋の中のしつらえも風情たっぷりで凛とした趣がある。それぞれの部屋のテーマを春夏秋に分けられ鈴木靖将氏が描いた季節ごとのふすま絵が品の良さを表わしている。このあたりは鯖街道の宿場町であったらしく周りの建物のたたずまいも趣がある素敵なものが多い。 次に登場がリクエストしていた熊鍋。銘々で出していただき熊だけではなくすっぽんの身もごろりと入る超豪華版。極上のすっぽん出汁との取り合わせは多分他の調理店ではあり得ないであろう。この店の熊肉はマキノ周辺の猟師さんに、解禁日の11月から一ヶ月半の間に仕留めてもらうそう。毎年手に入るのが2~3匹程度で猪なら30~40匹手に入るらしくかなりの希少価値。冬眠入りする直前の熊なので全身のほとんどが脂分でそのの脂が驚くことに臭みがまったくなく、猪肉のようなアクが出ないのが特徴。脂を食べるという嫌な感覚は全くない。生では半透明で真っ白な脂肪が鍋の中でチリチリ縮まっ弾力あるゼラチンのような舌触りとなりすっぽん肉とともにつるつる入っていく。さっぱりした赤ワインとこれも相性抜群であった。 このあと3回目の鮎が出てくるという容赦のない連続攻撃であるが参加者全員食べまくり。。。みんな「本当に美味しいねえ」「楽しいねえ」「贅沢だねえ」のオンパレードである。 クールダウンに炊き合わせが出てきた。モロッコいんげん、茄子の炊いたん、イチジクの煮物・・・このあたりの技術の確かさがさすがである。食材は地元のもの調理方法は洗練された京料理である。。 そのあとでてきた鯉コクも実にほっこりした味加減。もちろんここにも鯉の臭み全くなし。ええ出汁を存分に味わう。。 そして最後のヤマとなる名物の鮎ご飯の登場。ここの鮎ご飯は個人的には炊き込みご飯の最高峰であるといつも思う。。乾燥させた鮎を出汁用に使うとも言っておられた。鮎から出る出汁は限りなく繊細でさらしとしており、かつ旨みも鮮烈で力の強さも感じることが出来る。。お酒を飲み過ぎて味覚が不十分だったのが残念。 黒糖わらびもちも秀逸。。。黒糖がここまで主張するまた極限まで柔らかく作る技術に脱帽である。野にありながら洗練されていて、日本の情緒を再確認できる食事会となった。この場所ならではの極上の山の辺料理を最高のしつらえの座敷でいただく贅沢ができるこの店に敬意を表する次第である。参加者全員帰りのバスでは爆睡状態でありました。 滋賀県大津市葛川坊村町94 077-599-2058
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プロフィール
店主 鷺岡 和徳
外食歴40年。家に帰らず食べ歩く店主が綴ります。食べ次第更新中! 大阪・関西を中心に全国、時には海外の現地グルメも投稿。