夕陽ヶ丘の実に辺鄙な場所に店を構える「まさる」。このお店に来るようになってもう8年くらいになる。最近はあちこちのグルメ雑誌に紹介されもはや老舗の域に。他の飲食店にあって寿司ほど好みの店が人によって分かれるものはないと思う。寿司そのものに支払える金額や費用対効果、居こごちの良さや満足感をどこまで求めるのかなど人によって違うし、誰と行くのかということも大きく店選びでは関わってくると思う。 北新地のなかにも新進気鋭の職人がやっているお店もたくさんあって、珍しいものを食べさせていただいたりし、それはそれで旨いのだがなんか落ち着かなかったり、支払い額が尋常でなかったりというところも多い。 この店(まさる)はそのすべての条件を凌駕し、好みのうるさい私の口に合う大好きな寿司の一番店でカウンターに座ると、よぼよぼの爺さんになっても三カ月に一回このカウンターで一人で寿司をいただける身分になりたいといつも思ってしまう。 5時の開店一番が私の狙い目。結構この時間なら直前予約でも入店できる。カウンター12席なので時分時はなかなか予約が取れない。(らしい) いつものようにビールとお造りを所望する。目にも美しい造りは天然鯛のお腹部分の湯引き(やっぱええとこ出しよる)剣いかと淡路の赤雲丹(一緒に食べるとバリ甘)皮を炙った香ばしい太刀魚(脂乗りまくり)アナゴの焼き霜(これも脂がじゅわっとでて来よる)シマアジと今が一番の旬のあこう(熟成された旨さ・・最高)これだけで降参やで。。参ったと言ってしまう取り合わせ。。。 早速お任せでバンバン握ってもらう。最初の「アマテカレイ」はマコカレイの関西式の呼び名で同じ白身のヒラメとは違ったもちっとした舌触りと身にしっかりと脂が乗っていて若干の熟成感も感じられふくよかな味。旬そのものでいきなり「旨すぎるぜ」とつぶやいてしまう。 これまた旬の「鱚」は梅雨時の鱚は絵に描いたものでも買えといわれるくらいで、昆布締めにして大葉をはさんでアクセントに。喉を通ったあとに昆布の香りがさらりと感じる。同じ白身でもカレイとの味の違いが明確にわかる。 続いて炙った「さんま」が登場。生姜が乗って目にも麗しいが口に入れれば予想していた通りトロトロに溶けだしてシャリとなじむこと・・大体ご主人の私を喜ばす作戦が最近見えてきた(笑) 皮目を炙ったカマスは皮目のところから脂がしみだす。カマスの焼き食い一升飯と言われるが皮がこの 魚旨いことよくご存じ。昔九州で焼いてほぐしたカマスの身を混ぜ込んだ寿司を食べた記憶がある。 キンキの寿司も姿麗しく赤い皮目があぶられて芽ネギと肝ともみじおろしが添えられてさっぱりといただく。同じ白身でもそれぞれこんなに味わいが違うこと、日本に生まれてよかったと本当の思う瞬間。キンキは煮魚の最高峰で値段もバカ高いのにそれを寿司にするということはもちろん鮮度が大切で。。 微妙な白身の味の違いが細やかな仕事でよくわかる。このあたりがこの店の真骨頂といえる。 煮アワビは徳島産でアホほどでっかいものを切り分けていた。間違えなく市場の中での一番ネタでこのアワビを柔らかく炊いて握ってくれるんだけどこれを仕入れるということだけでご主人の寿司に対する矜持を感じる。おみそれしました。。。これも大好物のえんぺらのところ切って握ってもらう。チュルチュルでしこしこで限りなく柔らかく、思わず目を閉じて味わってしまう。ここの煮アワビを食べたら生のアワビや鉄板で生を焼くだけのアワビは絶対に食べれない。あわびの旨さを最大限にいかしたした寿司となっている。 名物の車エビは目にも麗しく味噌を射こんでマッタリとコクのある味。海老はもちろん限りなく甘く、煮切り醤油がその甘さをさらに引き立てている。海老好きの私はこれが大好物。 巨大なハマグリは身が詰まって上質な証拠。これをさっとゆがいて出汁づけしているんだけど火入れが完璧なためひたすら柔らかく貝の臭みも全くない。蛤を握る店最近見かけるがここまで仕入れにこだわって徹底しないとダメと感じる。このハマグリもたぶん究極に旨い。 小鉢には淡路の雲丹と毛ガニをシャリに混ぜ込んだもの。これは明らかに反則技で。。いまどきの言葉で感想を言うと一言「やばい・・」て感じです。たぶん究極の一口と言えるでしょう。美味しいものの出会いというか取り合わせをよくご存じである。甘くてコクがあって蟹の繊細さも感じられて雲丹の香りが口いっぱいに広がる。。 ガリを所望してその酢を麦焼酎の水割りに入れていただく、必殺ガリ酢焼酎。。私個人のオリジナルレシピ。この店では必ずこれをいただく。すっきりしてレモンを入れるよりは酸味は少なく寿司にぴったり。 旬の鱧は皮の身を炙って梅肉と大葉を乗せていただく。ただの落としよりも脂分が感じられ実に味わい深い。普通の落としよりも鱧の味が感じられる。考えられた人手間が大きな味わいの差となっている。 ウナギも店主独特の反則技で炙ったウナギで寿司米を包みそれを焼き海苔で巻いて出されると海苔の味と焼きたての鰻と寿司米ご飯で鉄板取り合わせの完成。ウナギがうなぎ屋よりも旨いというのは本来やっちゃあいかんことでこの店主の旨いもんを追求する姿勢がこういったものを作らせてしまうのかと納得。 苦手な「トロ」はパスをして瀬戸内の「水蝦蛄」はかなりのジャンボサイズ。まさに瀬戸内の味か。。 袱紗焼き玉子は山イモやエビなどいろんなものが入ってふんわりとシャリをまとって締めにはぴったり。これもこの店の名物。いろんな味が混ざりあいまさに至高の玉子焼き。甘いカステラのようなものより絶対にこちらのほうが合うと確信。 まだまだ追加で好物の赤貝は香りも秀逸。赤ガイは香りが命。もう一度この世の名残のように「しんこの6枚付をいただき」淡路の雲丹で今生の別れをし、ミョウガとキャベツの巻きもので今シーズンの寿司はおしまいとさせていただいた。いつも「いつ死んでもいい」と思えるおいしいお寿司をありがとう。 感謝。
人気のカテゴリー
最新の投稿
-
2024年11月23日el sabroso (エルサブロソ) 【大阪市 谷町六丁目】【大阪市 松屋町】大阪市 谷町六丁目大阪市 松屋町 その他料理
-
2024年11月22日伊中同宴 KAZU 【大阪市 四天王寺前夕陽ヶ丘】大阪市 四天王寺前夕陽ヶ丘 イタリアン中華料理
-
2024年11月21日たこ焼き創作バルOCTO 【大阪市 西田辺】大阪市 西田辺 居酒屋
-
2024年11月20日セイロンカレー 【大阪市 堺筋本町】【大阪市 長堀橋】大阪市 堺筋本町大阪市 長堀橋 カレーライス
-
2024年11月19日鮨酒場 天王寺あべのスシとフジ 【大阪市 天王寺/阿倍野】大阪市 天王寺/阿倍野 居酒屋
カテゴリー
-
- 我孫子
- 阿波座
- 安立町
- 今船
- 今里
- 梅田/JR大阪
- 江坂
- 恵美須町
- 扇町/天満
- 大阪ドーム前
- 岸里
- 岸里玉出(南海)
- 北加賀屋
- 北巽/南巽
- 北浜
- 北畠
- 京橋
- 粉浜
- 堺筋本町
- 桜川/西長堀
- 桜ノ宮
- 沢ノ町
- 四天王寺前夕陽ヶ丘
- 昭和町
- 十三
- 新大阪/西中島南方
- 心斎橋/四ツ橋
- 杉本町
- 住之江
- 住之江公園
- 住吉
- 住吉公園
- 住吉大社
- 住吉東
- 聖天坂
- 大正
- 大国町
- 高殿関目
- 田辺
- 谷町四丁目
- 谷町六丁目
- 谷町九丁目/上本町
- 玉造
- 玉出
- 塚西
- 鶴ヶ丘
- 鶴橋
- 鶴見
- 帝塚山
- 寺田町
- 天下茶屋
- 天神ノ森
- 天神橋筋六丁目
- 天満橋
- 天王寺/阿倍野
- 東部市場前
- 動物園前
- 中崎町
- 中津
- 長居
- 長原/出戸
- 長堀橋
- 南港/天保山
- 難波
- 西九条
- 西田辺
- 西天満
- 西淀川
- 日本橋
- 野田/玉川
- 花園町
- 放出
- 針中野
- 東天下茶屋
- 東三国
- 肥後橋
- 美章園
- 姫松
- 平野
- 福島
- 弁天町
- 堀江
- 本町
- 松虫
- 松屋町
- 緑橋
- 南田辺
- 南森町
- 都島
- 桃谷
- 森ノ宮
- 淀屋橋
月別投稿
プロフィール
店主 鷺岡 和徳
外食歴40年。家に帰らず食べ歩く店主が綴ります。食べ次第更新中! 大阪・関西を中心に全国、時には海外の現地グルメも投稿。