25歳から住之江で茶道を始めた。その時期は自分で料理を作っていたので何かの役に立つかなとの思いで近所で評判の男の先生がやっている教室に入門した。何もかも始めてのことで多くの女性生徒の中で私だけが男性だったせいもあり毎回緊張の連続だった。
お茶のいただき方はともかく玄関の入り方からふすまの開け方まで丁寧に教えていただき当時の私は知らないことばかりでカルチャーショックを受けた。
季節によって変わるお茶碗やお菓子、苦くて甘い抹茶をいただきながら日本文化に触れている喜びを感じていた。先生の表千家流の本流に則ったお手前は所作がとても美しく見ているだけで時間の経つのを忘れている自分がいた。
私の2人の娘も小学校に入学したところで入門をさせていただきお稽古をつけていただいた。
昨日その先生がお亡くなりになった。教室をやめられてから久しいが定期的に棒寿司などを持ってお顔を見に行くと「本当に忙しいのに来てくれてありがとう」と喜んでいただいた。
ご子息から父の遺言で「自分が死んだときは生徒が集まって徳さんで精進落としをしてください」と常々おっしゃっておられたと聞いた。
一生徒である私のことをここまで気にかけていただいたことに胸が熱くなる。教室に通わなくなって約20年。当時のうら若き同門の方々もすっかり落ち着いた感じとなっておられ年月の経ったことを実感する。
担当調理師に指示を出し当店のミニ会席3500円を少しアレンジして精進落としを社中の皆さんとともにいただく。
先付けは胡麻豆腐の上に芹の胡麻和えをのせたもの。(写真なし)
お造りは天然鯛の昆布締め。シマアジ。剣先イカ。
煮物椀は筍と菜種、長芋に鯛の子。良い出汁が引けていた。筍もまあまあ。
八寸は筍の木の芽和え、合鴨ロースワイン煮、鮎の甘露煮、村雨玉子、椎茸と細魚の手まり寿司。
天然鯛の塩麹焼き。アスパラガスの胡麻和えとからし大根。
天ぷらは海老風味揚げ、たらの芽、茄子、南京。
食事とお薄と苺大福で締め。
社中の方々といろんな話をしながら食事をしていると当時先生からいただいた温かい言葉を思い出し心が震えた。。もっといっぱい話をしておきたかった。。