大阪で有名な飲食コンサルタントの先生と一緒に阿倍野にある表記の店を訪問。カウンタ−8席と小上がりだけの昭和な寿司店。値ごろ感もあってご主人が楽しいので普段から一番良く行く地元のお店。
ご主人とご子息、奥さんだけの絵に描いたような家族経営。最初に生ビールを頂いて生もずくを所望する。普段は和歌山のものだけどこの日は徳島産と言っていた。さっと湯がいた熱々のもずくをを鶉の玉子の入った汁につけて頂く。シャリシャリした食感と磯の香、生山葵の辛味がとてもいい。食べ終わったらもずくの香りとエキスの入ったタレに同量の夏の間に仕込んで冷凍した鱧の出汁を入れて頂くという趣向。
酢味噌の塩梅が口に合うホタルイカと静岡産の旬の桜海老の造りを頂く。海老は髭をちゃんと取っているので口に刺さらない。独特のかそけき甘味と噛み締めたときの海老の旨味が口の中で広がり、人肌に燗していただいた白雪の本醸造ととてもよく合う。
今シーズン最後の水槽で泳ぐ琵琶湖の本モロコを炭火焼で頂く。塩を入れた氷水で活締めしてから炭火でじっくりと焼き込む。食べる前にご主人から食べ方の指南が入る。最初は唐揚げ状態になった頭だけをかじって日本酒を口に流し込む。続いてお腹の部分を頂いて最後に尻尾を食べる。三杯酢をつけて頂くんだけど日本酒が進みまくる佳品。
握りの扉はいつものように大阪湾のハリ烏賊。中に胡麻が鋳込まれていて塩と酢橘で頂く。ぱりっとした食感とあっさりした食味が特徴。紅葉おろしとポン酢で頂く平目の縁側は大好物。締めたヒラマサを巻き込んだ蕪寿司は天王寺蕪を使用。「味が三回変わってから飲み込んでね」とご主人の弁。最初に蕪の酸味を感じて次にヒラマサの旨味、最後に唐辛子のピリっとした辛味を感じる。このお店ではこれを「味の三段ロケット」と呼ばれる。
初夏の訪れを感じる瀬戸内産の平子いわしはすし飯にとても良く合う繊細で優しい身質。江戸前の仕事をした煮蛤も上質。片面を炙ったカンパチも脂が甘くて日本酒がよく進む。握りながらも客が飽きないように魚の話や食材の話をいつも熱心に聞かせてくれる。
続いてふわふわの身の紅ずわい蟹、自家製の唐墨の擂り下ろしを挟んだ貝割れ大根。この時期ならではの鯛の白子も椅子から落ちそうになるくらいふわふわでネットリしてコクがある美味しさ。鯖の漬けはこの時期ならではの上品でさっぱりした脂ののり。「この店で一番柔らかい寿司」と言って出される300gオーバーの鮑を2時間かけて蒸しあげる煮鮑。
「この店で一番固いよ」といいながら提供される口の中で暴れ回るイクラは岩手県の産卵直前の川に遡上する前の完熟卵を1年分塩漬けして冷凍する。冷凍することで塩が熟れていい塩梅となるらしい。
「口の中で溶けちゃう穴子」は熱々のふわふわでスフレ状態。「提供されて15秒以内で全部食べてね」とのことよ〜熱いうちに食べてね〜」と言いながらさっと炙って塩をかけて供される泉州産の脂乗りまくりの煮穴子。最後はこの店のスペシャリティの烏賊の印籠詰め。 ヒイカの両端に卵、真ん中に白子が入っている。軽く炙られた烏賊は柔らかくて香ばしくて部位によって味と食感が異なるこの店ならではの唯一無二の美味しさ。
お酒が少し残っていたので自家製唐墨を頂く。下から鮎、平目、ボラ。。。途中で作りかけの鯛の唐墨を見せてくれる。。卵の黄身の唐墨も作った事があると言っていた・・・(味はイマイチらしい)
お酒をしっかりいただいて会計は一人1万円弱。来週からは和歌山の稚鮎が登場。ご主人の 名前は安田豊次、だから「すし豊」。いい店です。。過去のすし豊はこちら
大阪市阿倍野区王子町2−17−29
06-6623-5417
営業時間:17:00~24:00
定休日:木曜日