終戦記念日に地元の護国神社にお参りに行く。毎年のことであるがフィリピン沖で死んだ叔父をはじめ、栄霊の御霊の安らかならんことをお祈りさせていただく。
そのあと友人の紹介で日本酒研究家の友人と表記の店を訪問。こじゃれたカフェがたくさんある中崎町の路地の途中にある古民家を改装した建物でオレンジの暖簾が目印。
まずはビールで乾杯。このグラスは富士山と言う名前らしい。泡の部分が雪みたいで楽しい。持ちにくいのが難点だがあまり気にならない。こちらのお店は紹介制で今回は後輩君がわざわざエントリーいただいた。
店内は大正時代の町屋を改装したというご主人の説明通りに大きな梁や土壁がいい趣を醸し出し、中庭には錦鯉が泳ぐ小さな池が見えて京都の小料理屋さんのような雰囲気。一枚板の銀杏のカウンタ−や品のいい版画がさりげなく飾られた上質感溢れる内装となっている。BGMはセンスのいいジャズ。
座付きは嶺岡豆腐(牛乳羹)に北海道の生雲丹を乗せたもの。お店はカウンタ−7席のみ。そう思えばかなり贅沢な空間となっている。現在、東京・大阪に数十店舗の飲食店を展開する実業家でもあり、TV チャンピオンシェフNo. 1グランプリ優勝のスーパー調理師の店主が御弟子さんと2人で切り盛りする。
献立は税サ別の12000円のお任せコース一本のみ。苦手なものがあれば配慮いただけるようである。
古伊万里の器に入った塩は日本の塩(高知産か?)、フランスの塩、モンゴルの塩、炭塩の4種類を使い分けて下さいとのこと。舐めて味を比べるが舌が鈍感なのかあまり違いが判らなかった・・・
お造りはアコウの薄造り。見た目の美しさだけで美味しいことは判る。独特のさらりとした脂がのって滋味深い逸品。食器も九谷・伊万里・備前のオリジナルの作家物や年代物を使用される。
天ぷらの扉は車エビから。世の中の天ぷら屋では全長10㌢以下のさい巻海老を使うのが普通であるがこちらでは15㌢オーバーの大振りの車エビを使用。甘みや食べ応えがワンランク上なのは言わずもがな。車エビの足の唐揚げに続きズッキーニの金山寺味噌を乗せたものが続く。
産地は忘れたけど太くて短い新種のオクラに自家製の唐墨を乗せたもの。大きな鱚に大根おろしと旨出汁のジュレを合わせたものをたっぷり乗せたものが続く。圧巻は剣先烏賊に北海道産と徳島産の雲丹を乗せて食べ比べ。
素材感を壊さず小さくひと手間加えることでより美味しく、楽しく供される。
天ぷらにはご主人お薦めの日本酒を選んでいただく。一押しの「出羽桜の雪満々」。一口目は柔らかな米の甘味を感じるがさらりとしてキレもある。ふくよかな旨味と吟醸香もしっかりと感じられる「いい酒飲んでるな・・」と自分で感じられる上品な辛口のお酒。
煮物椀はアコウの骨と身と蓴菜と粟麩。出汁も美味しくて「さすがテレビチャンピオン!」といった感じ。ご主人は全国技能五輪大会というコンテストでも銀メダルを取られていると聞き及ぶ。
お酒の2合目はしっかりした純米酒をとのリクエストに応えていただき「ブラック鯉川」をすすめていただく。
アルコール度数と精米歩合以外は全て謎なお酒らしくラベルが黒塗りで詳細不記載とのこと。穏やかな甘味と醸造酒のような苦味と酸味も感じられて天ぷらにはかなりいい相性を感じる。これは燗をしても美味しくいただけるだろうと思われる。
筍でもなくキノコでもない走りのマコモ茸はシャクシャクしてとても美味しい。卵黄をミディアムに揚げて好物のサマートリュフを乗せた物が続き、天国に一番近い島のニューカレドニア産の天使の海老は大葉を巻いて揚げられる。カリフラワーとブロッコリーを交配したと言われているロマネスコは僅かな苦味と青味、こりっとした食感が天ぷらの食材にドンピシャ。
甘鯛は皮を付けたまま揚げる和食のウロコ焼きの変形版。皮の部分は煎餅みたいで食感も楽しい。そのあとは水茄子のジュレ掛けと続く。
花火柄のジャケットも楽しい山形正宗夏ノ純米を続いていただく。店主との楽しい会話もあって何をいただいてもハイレベルの美味しさ。
大きな岩牡蠣は表面はぱりっと揚がっていて中身はレアに仕上がっている。これも旨出汁のジュレを掛けて供される。松茸と鱧を合わせた天ぷらはこの時期の出会いもの。
活帆立貝柱をすりつぶした物を揚げた物は口当たりもふわふわで貝柱そのままの状態で揚げたよりも旨味が強いような気がした。5回くらい揚げたり冷ましたりして根気よく仕上げるさつま芋はヘネシーVSOPと砂糖をつけていただくという楽しい趣向。
〆は若布を練り込んだつるつるシコシコの冷たい蕎麦。とろろがかけられていて昆布と若布と鯛の骨でとった出汁の美味しさも秀逸。
甘味は胡麻豆腐の黒蜜を掛けたものとフルーツを浮かべたパンナコッタのようなもの。さっぱりとして口当たりもいい。
日本酒だけでなくいろいろなタイプのシャンパーニュもご用意していただいているので次回はご主人お薦めのシャンパーニュと好物のサロンをいただくねと言って店を出る。スタッフの方と一緒に姿が見えなくなるまでお見送りいただき恐縮する
北区中崎西1-6-24
(7席のみの紹介制)