東心斎橋にある表記の和食店を先月に引き続き訪問。この日は福島のミシュラン和食店のご主人も一緒に相伴いただく。
こちらは江戸時代からの関西料理を今に伝える関西割烹会のレジェンドと言われる奥田氏のお店。心斎橋駅から徒歩7分、長堀橋駅から徒歩5分、島ノ内の南警察署の西側向かいの千年町のビルの2階に位置する。
階段を上がって店内に入ると広いキッチンが見える昭和を感じさせるL字型の白木のカウンター、そして、入り口の手前奥には座敷の個室がある。調理場は奥田氏と若い板前さん、接遇は奥田氏のお姉さんが着物で担当される。料理はコースのみですべて時価。この日は28000円で支払いはお酒をいただいて32000円でした。
料理は手に入る最高級の食材を使用し素材の特徴をしっかりと見極め「しんみり」とした味付けは圧巻の美味しさと言われる。使われる器も上質なものばかりで見ているだけでため息が出るものばかり。
個性的なキャラのご主人は弟子の指導をしながら料理を作り、客の相手もされる。その日使われる食材の話、独立して繁盛してミシュランの星を取った弟子の話など森羅万象にわたる話題で喋り出したら止まらなくなる。
座付きは若芽と筍を合わせたもの(写真なし)。若芽は10分くらい炊き込んでいてぬるぬるの状態で提供。筍は貝塚の木積産のものを使用。素材の味を引き立てる「しんみり」とした出汁の美味しさは秀逸。
続いての前菜は筍と自家製の味海苔を合わせたもの、鯛の子の玉子寄せ、一寸豆のクリームチーズ挟み、独活白煮、河内鴨ロース煮など。
この日の煮物椀は筍の真砂寄せと煮あわび。鶴菜と柚子の花が添えられる。
真昆布を使用した出汁は塩分がかなり少ないけどしっかりとした明確な味の骨格を持ち、薄味という簡単な言葉では言い表すことはできない凄みを感じさせるもの。漆絵が緻密に描かれた椀は輪島産で当時で30年前に50万円でオーダーしたとのこと。この椀を見るだけでこの店に来た価値がある。
今まで見たことのない大きさの伊勢海老に包丁を入れて身を取り出して氷で締める。それを大きくカットして供される。大きな伊勢海老の甘い身を口いっぱいに頬張っていただく幸せは初めての経験。
刺身の2皿目は明石の鯛とハリイカ。それぞれ最高の品質であることは見ただけでわかる。
百合根饅頭はかなり濃密な食感。百合根だけでは味が足りないので山芋と卵白を合わせて蒸して仕上げる。それをエンドウ豆のすり流しに浮かべる。出汁の効いたすり流しの出汁と塩気の塩梅も素材の良さが引き立てられる程度に抑えられている。本当に美味しいなあと思う逸品。
天然ヒラマサの焼き物。これも店主の奥田氏が考える「生成り料理」。魚の味を最大限引き出すことに主眼を置いた味付けに脱帽。添えられた大根おろしに醤油を垂らしてそれを焼き魚につけていただく。
続いて鯛の白子をポン酢で和えたもの。日本酒がさらにすすむ合肴である。
この季節の奥田氏のスペシャリティーの「筍メバル」登場。これは少々しっかり目の甘辛い味付けだけどさっと炊き上げている。木の芽が全体の味を引き締める。筍は異なる部位を3種類使用。魚と筍のしんみりとした味の調和が素晴らしい。あくまで素材の味を生かすことに主眼を置いた関西料理ならではの味付け。熟練の技と凄みさえも感じる逸品。
ここで白いご飯が供される。メバルの出汁を上から掛けていただくのをご主人に勧められるがお腹いっぱいだったのでスキップする。
デザートは前回と同じ抹茶アイスに小豆の炊いたものを添えたもの。
前回の梅市はこちら
大阪市中央区東心斎橋1-6-3 ハイツ千年町2F
17:00~21:00
定休日:日曜、祝日
06-6241-0576