30年前、バブル経済真っ最中のなか大学生の私は飲食店のアルバイトで稼いだお金を握りしめて高級住宅街の帝塚山にあるジャズを聞きながらお酒を飲む「ペントハウス」という店に夜な夜な通っていた。お金持ちの大人が集まる社交場で「カティーサーク」と言うウイスキーを背伸びして飲み大人の階段を歩き始めようとしていた。
バブルがはじけその時のお店のオーナーがあびこ交差点にお好み焼き屋さんを出された。今年でかれこれ25年くらいになるのではないかと思う。
一般的に飲食店が10年続くというのはかなりまれなことで昔は飲食店の寿命7年とよく言われていた。しかしながら今はライフスタイルの変化の早さから3年と言われる。
今も開業1年で6割の飲食店が閉店する。10年となると生存率は5%とよく言われる。20年の場合は0.3%で30年ともなると0.02%らしい。つまり5千件で1件しか30年続かないという事である。
その継続性の事由を分析するとクリンネスが最も密接に関係するといわれる。簡単に言えばお店が綺麗かどうかと言う事。こちらのお店も内装は古いけどピカピカに磨かれていて厨房も、フードも食器もグラスもピカピカ。こういった当たり前の事が一番難しい。
一方でグランフロントにある見るからに飲食プロデューサーが手がけたであろう格好のいい演出いっぱいのお店はオープンキッチンの中はぐちゃぐちゃでカウンタ−は手垢がついていて全体的に埃っぽい。
飲食店は店主を始めそこで働く人の心とスタンスがクリンネスに表れる。
そしてその目に見えない意識がお客様に伝わるという事は同業者としていつも肌感覚で感じている事である。
しかしそんな事はどっちでもよくシニアの友人数人とその店を数十年ぶりに訪問する。
まずはビールと一緒に烏賊の塩焼き。多分冷凍の赤烏賊であろうか柔らかくて普通に美味しい。価格を考えると充分である。
とん平焼きはこちらでは柔らかく煮込まれた豚肉が入っている。これもビールにドンピシャでかなり美味しい。店主との懐かしい昔話も味のうち。
豚キムチも豚バラをカリカリに焼き上げているためにかなり美味しく頂ける。長年にわたりより美味しくなるような小さな改善を積み重ねておられると聞く。
お好み焼きは客席の鉄板でスタッフが焼き上げてくれるスタイル。家族連れ等で幼児連れの場合は厨房で焼いてくれる。
メニューは名物の豚玉を始め「やまと焼き」「万国博焼き」などの変り種も数種。
お酒のアテの葱焼きはポン酢で頂くとあっさりしてとても美味しい。見た目は普通の感じなんだけど生地も出汁がしっかり効いていてとても美味しい。
スジコンもとてもいい仕事をする。いつもながら仲間とワイワイ言いながら食べるお好み焼きはとっても美味しい。
そしてよくテレビでも紹介される「究極の豚玉 820円」はブタバラ付きロースと肩ロースを生地の上にぐるぐる巻にしたもの。ビジュアルのインパクトが素晴しい。
豚の脂の甘みが噛み締めるとクチの中で染み出して外のバラ肉部分はカリッと香ばしくて中は肩ロースのジューシー旨味が同時に味わえる。
しっかりとした食材へのこだわりと美味しいものをつくるという探究心と日々の改善が25年の永きに渡る飲食店永続の理由と実感した夏の日の夜でした。
大阪市住吉区苅田7-12-19
電話: 06-6697-8540
定休日: 無休