新蕎麦の出るこの時期毎年恒例のお蕎麦の会にお呼ばれする。場所は心斎橋大丸北館にある明治10年創業の大和屋さん。日本を代表する老舗料亭の料理とその世界では知らぬ人がいないと言われる高橋邦弘名人の蕎麦のコラボは毎年大人気。私も今年で3年連続でいただく。
献立の最初は水蕎麦。蕎麦をそのままいた出汁につけずにいただくという趣向。本来は御しのぎと言うか箸休めなんだけどあとから蕎麦がたくさん出てくるのを知っているので最初に頂く。。
透明感のある蕎麦が空腹の胃に優しく入っていく。。ビールを頂きながら2段重になった上段のお造りから頂く。
軽く一塩をして締めた鯛に焼き松茸。かぼすを絞っていただく。お造りの下には昆布で締めた大根が横たわる。これだけでも大和屋さんの仕事というのが一目瞭然。端正な盛りつけは食するのがもったいないくらい。
ズワイ蟹の棒肉と蒸しアワビの盛り合わせ。蕎麦で作った松葉の下にはほうれん草の浸し。かかっているソースは柿酢。何とも季節感のある取り合わせである。
酒肴盛りあわせは味噌を入れて焼き上げたカステラ玉子。河内鴨を串焼きにして山椒をかけたもの。巻大根に銀杏、慈姑など。これも季節感たっぷり。
焼肴は高級魚の白甘鯛。上に乗っているのは唐墨。火の入り方も完璧。お客さんは結構若い方も多い。。
炊きあわせとして上質の穴子を柔らかく炊いて海老芋に乗せたもの。餡の加減が完璧すぎる。
天ぷらは大振りの車エビ。やはりこれが一番美味しい。鱧の鳴門揚げといちじくの天ぷらもこの時期ならではのもの。
そしてここから高橋名人の世界が始まる。今回は御弟子さん2人をつれて来阪。ニコニコしながらも真剣に蕎麦を作る。名人が作るそばはすべて二八といっておられた。蕎麦はいろいろな地方のものをブレンド。表皮を剥いて丸ごと自家製粉。新蕎麦だけで作ると味が良くないと言っておられた。
良い材料を使うことが一番とも言っておられた水も汁もすべて広島の自身のお店から持ってきているらしい。また「自分のそばが日本で一番おいしいとは思っていない」という謙虚な意見。「自分が美味しいと思うそばを作り続けている」とのこと・・・
確かに私が美味しいと思う蕎麦は地元でもいくつかあり比較対象することは好みの問題もあり難しい。しかしこの名人の打つ蕎麦は白くかつ薄緑に光り輝いていて細い割りに弾力とコシがあり蕎麦の香りもあとから鼻に抜ける。
見た目は頼りない感じだけどしっかりと蕎麦が主張する。出雲や福井の単に固い蕎麦とはレヴェルが違う。ただの蕎麦なんだけどアーバンな空気を醸し出す。上質のかつおの香りがする汁も柔らかで思ったよりも辛くなく添加物臭の全くしない尖った部分を感じないものとなっている。
薬味はまったく必要としない。。麺線の整い方も美しくビジュアルも美しい。当然舌の上においたときにざらつきもなく口触りよくスルスルと喉に入る。。
甘味は蕎麦の実が入ったぜんざい。お昼に洋食での会食があり昼食ダブルヘッダーのために完食できず。しかしよく出来たお蕎麦であった。。。