山口から来阪した友人と表記の店に行く。梅田で寿司を食するときに自分が行きたいと思う寿司店ナンバーワン。阪急電鉄京都線阪急梅田駅茶屋町口より徒歩1分。DDハウスやがんこ寿司のすぐ近く。トイレはないのでDDハウスで済ましてから行くのがお約束。
暖簾をくぐると大きな三角形のカウンターとそのまわりに丸椅子が10席ほど。座ると入り口の引き戸が背もたれになるほどの狭さ。ご夫婦お二人で切り盛り。店も狭けりゃカウンターも狭い。お父さんとお母さんがコノ字のカウンターに入るとワンボックスカーで皆でドライブしながら寿司を食べている気になる。隣の客との密着感も強烈にある。
まずはお造り盛りあわせ。名物のあわびちゃんはいつもコリコリで美味しすぎる。この店の一番人気のあわびちゃん。この店ではネタはすべて「ちゃん」づけで呼ばれる。生の肝が大好物で私の元気の源。大きく切られた天然ブリも脂がサッパリしてかなり美味しい。剣先イカと平目も秀逸。
この店の横の通りは今や小好鮨通りと呼ばれている。席数が少ないので入店するのがかなり難しい。外国のガイドブックでよく紹介されているらしく中国、韓国、アメリカと外国人率もかなり多い。80才のご主人はインターナショナルでどこの国の言葉も雰囲気で話される。フランス語も出来るらしい。
一日の半分の客が外国人の事もあると言っておられた。お店はそういうことで入店お断り率がかなり高い。しかしお店に入ると今年で53年になる寿司店の矜持とご夫婦の漫談のような掛け合いをしっかりと楽しむ事が出来る。
大好きなたいらぎ貝はいつも上質。歯ごたえ重視の縦切りが嬉しい。ご主人が塩をかけてくれるのでそのまま頂く。アルコールはよく冷えたキリンラガーと黒松白鹿の常温。そして白鹿の冷酒のみ。。白鹿を燗酒で頂くのがこの店での私流。
白ミル貝はとてつもなく甘くて貝の香りがふんわりと鼻孔に残る。決して固すぎず貝のえぐみは全くない。いつも思うんだけどご主人の仕入れの目利きが素晴しすぎる。
今が旬のとり貝はとても色気のあるビジュアル。新鮮なのでコリコリして貝の旨味と共に喉の奥にストンと落ちる。余裕があるときはさっと炙ってアテでいただく。通称「焼きトリ」である。
分厚くカットされた鯵はしっかり締められているんだけど味はかなり深い。熱燗がどんどんすすむ。女将さんが注文を聞いてお父さんに握る順番の指示を出す。女将さんの陽気さと突っ込みが超面白い。全国からご夫婦を慕って来られる客が多いと言うのもごもっともである。「この年になったらお母さんが男でわしは女みたいなもんですわ〜」とのこと。話の面白さが深くて品がある。
これも大きく新しく新鮮な赤貝。そこらにあるものとは全くものが違う。これも塩で頂く。ヒモと身でワンセット。この日は中国人客と一緒にカウンターで食す。外国人が来たときは周りの客が皆で相手をするのでとても面白い。外国人客が寿司とご主人を写真に撮る様がいつも面白い。ポーズをとる様も最近はさまになっている。
福岡産の筍。この時期のこのお店のスペシャリティ。先っぽの柔らかいところと根っこのところがあるんだけど個人的には根っこの方が味がある気がして好き。鮮度がいいためにエグミも全くないしコリコリして柔らかでかなり美味しい。
国産のトロもめちゃくちゃ美味しいと友人が言っていた。
個人的に大好きな蛸。お酒と共に頂いていると狭いお店も心地よい空間になってくる。お店の中が一体感があって一人客はさっと食して帰る。長居をしないのがこの店のルール。
名物のアナゴは注文を聞いてから親父さんがいつも「あっつ〜!」といいながら焼いて握ってくれる。脂ののりも素晴らしくてふっくらしていて香ばしい。
酒以外はだいたい皆、ひとり5000円くらい。勘定を頼むとこの日は二人で「1億2000万円!」とのこと。「安っす〜」と答えると続けてお釣りを「80億円!」と言われて渡される。寿司代よりお釣りの方が多いので「儲かった〜」と喜んで店をあとにする。お店が狭いので店の外に出ると開放感があり銀河系に飛び出た気になる春一番の候。
大阪市北区芝田1-3-12
06-6372-5747 日曜 水曜休み