パリの繊維商社に勤めておられたフランス人の友人と仕事の打ち合わせを兼ねて地下鉄四ツ橋線玉出駅東100mにある表記の店を訪問する。いつものようにカウンタ−でプリフィックスコース6000円を所望する。こちらのお店の肥田グランシェフは高校を出てから辻調理師学校一筋で創設者の辻静雄氏の片腕としてフレンチ部門を作り上げた方。
若かりし頃の肥田シェフがポキューズと一緒に写る写真が店内にたくさん飾られる。料理は当然の事ながらヌーベルキュージーヌを代表するポールポキューズやアランシャペルが作る当時のリオンのレストランのオーセンティックなレシピを中心としたもの。
まずは生ビールで乾杯をしていつものように食事の扉は豚肉の青胡椒の入った豚肉のリエットとポワールのバケット。続いて旬のとうもろこしを焼いて冷製スープにしたものは甘さに香ばしさが加わり何とも言えない上質な仕上がり。
前菜盛り合わせは根セロリのサラダ、フレンチドレッシングにオレンジジュースを合わせた人参のラペ、無塩バターが添えられた低温調理の自家製ハム(煮豚)はハーブの香りとしっとりとした絹のような仕上がり。さっぱりした仕上がりの田舎風パテは安定の美味しさ。サーモンマリネは滑らかで冷たいトマトのソルベをソース代わりにしていただく。ラタトゥーユもワンランク上の美味しさ。
アラカルトで注文したこのお店のスペシャリティのフォワグラのテリーヌは最後の在庫と言っておられた。専用壷で蒸し焼きにしたものをスプーンでこそぎ取って盛りつける。濃厚でネットリとした舌触りと独特の旨味とコク、甘味が口一杯に広がる。ドライ無花果を炊き込んだものとシェフがチョイスしてくれたアロマの強いゲヴュルツトラミネールでマリアージュを楽しむ。最近は鶏インフルのせいで上質のフォワグラが入荷しにくいとのこと。今回の材料はフォワ・グラ・ド・カナール(鴨)で世間でよくあるガチョウではない。
魚料理は初めて頂くイカめしのトマトソース。どこにでもあるようなプロバンスなソースなんだけど酸味と塩分のエッジが立って際立った美味しさにビックリ。炭水化物たっぷりなのでお腹にずっしりと来る。この料理はシャルドネで頂く。
友人は鱈と帆立貝で作ったムースを焼き込んだものにアメリケーヌソースを添えたもの。スフレ状のすり身に海老の香りとコクが濃厚に抽出されたソースの取り合わせは伝統的なリヨンの仕事で雑味や癖は全くないピュアな味わい。
トロトロに煮込まれた豚バラ肉の黒ビール煮込みは見た目よりはあっさりしている。飴色に炒められた玉ねぎで作った甘いオーセンティックなソースがビックリする美味しさ。肉に敷かれた口直しのマッシュポテトのバランスも良くて大リーガー級の豪速球料理にビックリ。豚肉なのでピノノワールと一緒にいただく。
友人のチョイスは私も以前頂いた鹿肉と和牛のソテーでソースは鹿の骨と肉と筋を炒めてマリネした野菜とともに出汁を取って赤ワインとワインビネガーを煮詰めたものを黒胡椒とブルーベリーのジャムを加えて調整したというもの。いろいろなところで色々な赤ワインソースをいただくけどこれほど濃厚で卓越した個性のある美味しいソースは始めてである。このソースはパンとローヌかシャトーヌフデパフの田舎臭いワインだけで楽しめそうな感じ。岡山で獲れた子鹿のロースも柔らかくて当然の事ながらソースとの相性もいい。
この日はお客さんも少なめだったので目の前で次の日に使うソーセージの仕込み。国産豚の塊をカットしてミンチにして撹拌。水の分量が難しくて肉の脂とうまく乳化させるのにテクニックが必要との事。粘りを見ながらそれを豚の腸に詰める。
空気が入らないように慎重に且つ手早さが求められる。腸詰めにされたものを70℃で30分加熱する。冷水で急に冷ます事でプリプリに仕上がるとのこと。ずっと物欲しそうに見ていたので自家製ベーコンとともに試食させて頂く(感謝・・・)
フロマージュはハードはオールドアムステルダムの30ヶ月熟成、白カビはカマンベールノルマンディ、ウォッシュはポンレック、ブルーはブルードヴェルニュ。ワインはポルトガルのデザートワインのアランブレ。美しい琥珀色で熟成感もあってチーズとの相性はとてもいい。ポルトガルの港の風景が目に浮かぶような取り合わせ。好みでグラッパやブランデーも用意されています。
大好きな美人パティシエが作るデセールもこの店のウリで私はこの時点でお腹いっぱいでギブアップ。フランボワーズと黒酸塊のソルベ、真っ白なコーヒー風味のブランマンジェ、チョコテリーヌにグレープフルーツピールを載せたもの、グレープフルーツのカモミール漬2種、プディングとベリーのタルト、パンプディングなどを好きなものを好きなだけ選ぶ事が出来る。。
カジュアルだけど本物のヌーベルキュージーヌをしっかりと食べることが出来る稀なお店で何を頂いても満足出来ます。お薦めは肥田シェフと話が出来るカウンタ−席。
*食事の後で訪問した北畠のバーでまたもや「ぺろぺろ店主さんですか?」と美しい女性にお声をかけて頂く。。「一度会いたかったんです〜」と言われいい気になって少しだけ会話をさせて頂く。。。ホント有り難い事です・・・。
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