すし豊 4月【大阪市 松虫】

友人と久しぶりの「すし豊」訪問。阿倍野の王子神社のすぐ近く細い路地を入ったところにある、かなり古びた昭和な感じの小体な店構え。カウンター8席と小上がり2卓の店内。下町風情あふれたとても普通なお店。しかしながら紹介した友人は皆、このお店を好きになる。

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この時期は稚鮎が入荷しているので天ぷらと日本酒のマリアージュを楽しみに伺う。季節によって焼き諸子、温かいもずく、川蟹、筍などいろいろなものを寿司の前に楽しむことが出来る。まずはビールで乾杯してから目の前の水槽で泳ぐ稚鮎を揚げていただく。昨日ご主人自らが穫ってこられたらしくその漁の話を聞きながらお酒を飲むのも楽しみの一つ。

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カリッと薄衣で揚げられた鮎は胸びれがピンと立ち、まるで泳いでいるかのよう。添えられた根付きの蓼の若葉もこの時期のあしらえものとしては最高で若葉を齧りながら鮎をいただくのが私流。鮎は一口でいくと熱いので最初に頭の先っちょだけをいただく。頭の旨みを噛み締めるとそのあとで腸の部分の苦みを感じながら一口でいただくとより美味しく味わえるというご主人からのレクチャーが入る。言われた通りにいただくとなるほどと目からうろこ状態となる。日本酒をいただきながらムシャムシャ頂く。

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寿司の前にホタルイカを軽くいただく。始まりはいつものように大阪湾のハリ烏賊。熟成感もあり旨みとともに独特のぱりっとした歯ごたえとと中に鋳込まれた胡麻の香りが口の中に広がる。塩とスダチを軽くあてているので甘味が引き立つ。脂がのりまくりでネットリした食感の天然鯛は紅葉おろしとポン酢でいただく。

続いてマグロの漬けと蕪寿司。蕪寿司は中に軽く締められたヒラマサが鋳込まれていて、最初は甘酸っぱい蕪の味がして噛み締めるとヒラマサの旨味が口いっぱいに広がる。更に咀嚼(30回くらい咀嚼してちょーだいと言われる)していると唐辛子の辛さがあとから感じて、店主はこれを味の三段ロケットと呼ぶ。しっかり〆た大きな1枚付けのコハダは日本酒と相性ぴったり。

しっかりと煮込まれたシャコは白子と卵が入ったものを食べ比べ。関東弁のご主人の面白トークを聞きながら食す寿司はとても上質。炙ったカンパチは香ばしくて甘い脂が口の中に溶け出す感がとてもいい。カワハギの昆布締めはこの店では初めて頂いた。

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この時期旬の桜鱒。海で獲れるものなので川魚特有の寄生虫はいない。とろける脂に悶絶する。鯖は酒炊きの昆布を巻いてよりいっそうマイルドな食味となる。続いてこちらのご主人が「ウチで一番柔らかい寿司ね!」と言いながら出される2時間煮込むあわび。この口上も約20年くらい聞き続けているのでほぼ物まねが出来る。続いて「この店で一番固いよ」といいながら提供されるイクラ(写真なし)。旨みの強い濃厚なイクラは一口で頂くと口の中で暴れまわる。岩手県の産卵直前の川に遡上する前の完熟卵を1年分塩漬けして冷凍する。冷凍することで塩が熟れていい塩梅となる。

「口の中で溶けちゃうよ〜熱いうちに食べてね〜」と言いながらさっと炙って塩をかけて供される泉州産の脂乗りまくりの煮穴子。甘々でふわふわでスフレのような食感。提供されてから15秒以内に口に入れなければならないルールがある。最後に軽く炙られて提供されるこの店のスペシャリティである烏賊の印籠詰め。ヤリイカを使用する江戸前の古い仕事。この仕事についての解説も3分くらいあり世間でよくあるイカめしとの異なりをこと丁寧に教えてくれる。烏賊の中に白子と卵が入って部位によって味と食感の異なりを楽しむことが出来る。

2016-04-23 09.14.33

お酒が残ったので春唐墨を出してもらう。当然自家製で手前からイサキ、ボラ、鰤の卵を塩漬けにして干したもの。ここでご主人の唐墨談義が始まる。こちらでは塩漬けも干すのも冷蔵庫を使用。そうすることでまろやかな味に仕上がると言っておられた。

「珍しいし美味しいね〜」と言いながら食しているとご主人がおもむろに2階に上がって現在つくりかけの唐墨をもって来られた。

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かなり大きくて褐色系のマグロの唐墨。

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手前から鰹、桜鱒の唐墨。一番奥は忘れた・・・

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奥から鯖・ヒラメ・鰹・ホウボウの唐墨。。珍しいものばかりで見ているだけで楽しい。次回これらを食しに訪問することにする。血圧上昇と痛風になりそうだけどこれは食べないとね・・・

大阪市阿倍野区王子町2−17−29
電話:06-6623-5417
営業時間:17:00~24:00
定休日:木曜日

大阪市 松虫 寿司

ジャンゴ(Django)【大阪市 松虫】

阿倍野の松虫交差点東にあるカフェレストラン。辺鄙な場所だけど比較的自宅から近いのでヘビーユースしている。店のジャンルは「男のオーガニックカフェ」無骨なんだけどしっかりと計算し尽くされたカッコいい空間で自家栽培された野菜で作る素材感溢れた食事とお酒を提供される。

知らなければ素通りしてしまいそうな地味で小さなお店は看板(小さな表札のようなものはある)もなく鉄格子に覆われた窓が特徴の倉庫か美容院のような謎めいたファザードで嫌がらせのような重たい木の扉をあけるとLAのダイナーを更にナテュラルにしたような趣味性の高いブラウンな内装と緩いレザーのソファー席が目に飛び込む。店はすべて店主の手作り。店名はジャズ・ギターの神様、ジャンゴ・ラインハルトから。初めての客であってもイケメン店主の「Jackさん」が穏やかに温かく迎えてくれる。*顔はかなり彫りが深くショーンKか外国の俳優さんみたい。写真はHP参照・・・

2016-03-21 21.50.00

BGMはプレーヤとレコードと真空管のアンプが奏でるJazzや店主のお気に入りのカッコいい曲。ボブディランのライブ生録された「風に吹かれて」は背筋がゾクゾクする。一言で言えば素敵すぎる空間。。しかしながら食べログ等の評価を見たときにこの店の空気感や食事の素晴しさはわからない客もいてわからん人にはこのセンスが全く理解が不能であると思う。

以下HPより・・・
世界のソウルフード DJANGO
料理の主役は、土づくりからはじめた畑で有機栽培した野菜。
たくましく根を張った玉ねぎ、真っ赤に熟したトマト、
ゴツゴツしたかぼちゃなど、
旨みと滋養が凝縮された自慢の素材をゴロゴロ使い、
男性も満足できるボリュームに。
味わい深いコーヒー&ベーグルは、
通もうならせる“DJANGOオリジナル”です。
そして、わが家のようにほっとくつろげる内装も自分たちの手づくり。
壁や照明に椅子、カップからカトラリーまで、
ひとつひとつ時間をかけて作り込みました。
そこに流れるのはMose Allison,Eddie Jeffersonなど
懐かしくも熱いJAZZの名曲たち。
いい音楽を聞きながら旬の野菜ご飯をガッツリ食べて大いに語らう、
少し武骨で気の効いた空間、僕が20年間思い描いてきた
『世界のソウルフード DJANGO』です。
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この日は2件目だったのでハイボールに合う料理を数品お任せでお願いする。

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最初の一品は「原木シイタケと広島産カキのコンフィ」ハーブを漬け込んだオイルの中で椎茸とカキをいっしょに火入れ。椎茸にはカキの味がカキには椎茸の味が染み込む。相性の良さはいわずもがな。

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特製グラタン「NONAME」
グラタンソースは春キャベツと白菜をゆっくりソテーして甘みを出したあとにピューレ状にしたものをベシャメルソースとドッキングさせたたもの。
コクを出すためにチーズとベーコンを刻んでトッピング。パスタはリボンの形状のファルファッレを使用。更に小さめの芽キャベツもあわせて「かわいい」を意識して作ったとのこと。

2016-03-21 22.29.19

野菜はほとんどが能勢にある自分の畑で栽培。カラトリーや箸置きなどもすべて手作り。
続いての料理も「NONAME」
収穫したての人参2種とじゃがいものキタアカリをソテーしたものに野菜スープといっしょにピューレにした人参ソースをかけたもの。身体に優しいホッとする料理は野菜の甘味と苦みがしっかりと感じられる。ウサギになった気分・・・

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70年と80年代によく聞いたリンダロンシュタット。懐かしくて涙が出そうになる・・店主さんが料理に合わせた丸い音楽を選んでくれたらしい。

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「石見ポークバラ肉のビール煮込み」
石見ポークのバラ肉塊に焼き目をつけて、季節の野菜のソテーしたものといっしょにビールといっしょに煮込んだもの。パンチをつけるためにアメリカ・サンフランシスコの地ビールで苦みの強い「リバティーエール」を使用。。豚肉と野菜ソテーの甘み・ビールの苦みのコントラストが楽しい。お酒は当然バーボンウイスキー・・・

こちらのお店のスペシャリティであるベーグルと一緒にいただく。生地から焼き上げまですべて手作りで甘くてモチモチした食感が特徴。

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続いての料理も「NONAME」海老好きの私のために作っていただく。
エビを頭と殻をつけたままで焼いて香りを出したあとに殻をむく、多めの自家栽培ニンニクでアスパラといっしょにソテー。スープストックの中で外した頭を煮出しエビのダシと葉玉ねぎのピュレをあわせたソースを添えたもの。当然のことながら海老とソースの調和が素晴しい。

私の口によく合う優しい料理と、心に染み入る音楽、カッコいい空間と落ち着きのある雰囲気は最高の安らげる場所。夜は予約必須です。

大阪市阿倍野区王子町2-4-11第2ナカビル1F
06-6115-7955
営業時間11:30~15:00
17:30~22:30
定休日火曜日 第一第三水曜日

大阪市 松虫 カフェ

お酒なんでも研究所 カフェ部【大阪市 松虫】

友人と阿倍野の松虫交差点近くにある表記の店を訪問。たまに訪問したくなる大吟醸日本酒だけを置くかなり趣味性の高いお店。住宅街の中にある築90年の普通の家を改装した隠れ家。目立たず大きな看板もないのでふらりと立ち寄る客はいない。

こちらは都島にあるお酒研究所という機関のカフェ部で支店のようなもの。妙齢の部長のみさこさんがひとりで切り盛りする。カフェ部だけどビールやコーヒーはない。選び抜かれた大吟醸酒だけのお店。ご主人は博士号をもつ本物のサイエンストで研究ひとすじらしい。その方がお酒をセレクションし、マリアージュを追求した肴を考えられる。

普通の家なので店に入ると靴を脱いでお邪魔する。カウンター4席とテーブル(ちゃぶ台)2席のみ。店のセンスはかなりいい・・

グラッパグラスに注がれる大吟醸はすべて1杯500円。そのお酒にあった酒肴もすべて500円。料理7品のフルコースが3500円を3000円で提供される。お酒の中には一升1万円以上のものもあるがそこは量で調整するらしい。

2015-12-27 17.45.02

お酒を頂くごとにみさこさんのご主人が作る持ち帰り可能なお酒解説ファイルがつく。こちらを読みながらいただくととても楽しい。。

この日いただいたお酒は

■宮城県塩釜市 浦霞 大吟醸
■愛媛県四国中央市 梅錦 大吟醸「究極の酒」
■新潟県新発田市 菊水 純米大吟醸
■岐阜県高山市 深山菊 大吟醸
■秋田県横田市 天の戸 純米大吟醸
■大阪府交野市 片野桜 純米大吟醸 白櫻
■香川県琴平町 金陵 限定無濾過原酒 純米大吟醸 大瀬戸の花嫁
■岩手県盛岡市 七福神 長期熟成吟醸酒
■兵庫県西宮市 福寿 生もと純米熟成生酒
■静岡県掛川市 開運 大吟醸秘蔵古酒

コース料理はオリジナルの真空低温調理法をうまく使って構成される。

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一番最初はこちらのお店を代表するタラ白子(タチ)の昆布締め。真空低温調理したものでカンズリと大根おろしを合わせたものを薬味にしてポン酢でいただく。

すべての食材(牛肉・豚肉・鶏肉・魚卵)はタンパク質が凝固する温度が異なるためにそのギリギリの温度を狙って火入れをすると細胞が壊れない。昆布は脱水(離水)のために使用しているために(多分そうだと思う・・・)強い旨みや風味は特に感じないがそれが日本酒の味をしっかりと際立たせる。

プリンプリンでトロトロの舌触りだけど生っぽさは皆無。まさに芸術品のような料理である。「酒に合う」という意味をしっかりと解析し「観察・分析・判断」を繰り返し、他にはない絶品の料理を提供される。真空調理は塩の加減が難しく1ミリ単位の量で大きく味が変化してしまう。

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キングサーモンを低温調理したものを生姜醤油で食す。それぞれの料理にあったお酒が出てくるのがとても楽しい。これも一見したら生のようだけどしっかりと火入れがされている。口に入れると体温で溶け出すのが凄い。世間では大吟醸はフルーティーな香りが強すぎて食事に合わないと言われる方が多いがこちらのお店のセレクションは食中酒にぴったりのすべて目からうろこのものばかり。

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自家製のハムもはゼラチンがたっぷり。こちらでは真空調理は保存のための真空ではなく料理をより美味しく、素材感を引き出すための技法なのでどれもワンランク上の仕上がり。みさこ部長との会話もとても楽しい。見た目も心もカッコいい女性。

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ニラと小さな帆立貝が入った餃子。ホタルイカやウズラの玉子の時もあるし具材はその時々で変わる。しかしながら使われる野菜や調味料は完全に計算されていてこの日はハーブの入った塩でいただく。ニラの漬け物も入っているのか味わいに陰影があって旨みの相乗効果をしっかりと感じる。

この料理に合わせる純米大吟醸は穏やかな香りで料理との調和も抜群。柔らかい余韻の長さが特徴。「日本酒を楽しむ」とはまさにこのことと思った。

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フランス産の鴨ロースもこちらの店のスペシャリティー。個人的には日本一美味しい鴨料理と断言できる。しっとりとした身は真空調理ならではのもの。添え物は葱の昆布締め。山葵醤油でいただく。ここで粉山葵を使うのがこの店の真骨頂で原料はホースラディッシュなので肉との相性は本山葵や最近焼肉屋でよく見る合成保存料たっぷりの茎山葵よりも間違いなく鴨肉がおいしくなる。まさに「粉山葵を舐めたらあかんで!」と言う感じ。博士は本当に食べ物に精通されていることがこの一品をみると理解出来る。

北大路魯山人も過去にパリの「トゥール・ダルジャン」で画家の荻須高徳、小説家の大岡昇平とともに出てきた鴨料理を持参した粉山葵を酢で溶き、それを醤油と合わせてつけて食べたと言うのを昔に聞いたこともある。今でも魯山人醤油としてパリの店では出していただけると聞き及ぶ。(パリの店は行った事はないが・・・)

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続いてこちらのお店で初めて頂く豚トロの味噌漬けを真空調理したもの。脂分はしっかりと流れていて旨みのみが残る佳品。味噌と葱は別添えで薬味としていただく。

この料理に合わせる熟成生酒もかなり美味しい。ノーベル賞の晩餐会で飲まれたもので5年間生熟成させているらしい。吟醸酒は2年くらい寝かした方が美味しくなると言われていてこのお酒も蜂蜜のようなふくよかな香りと味噌というか麹の香りがお酒にドンピシャの相性を見せる。この組み合わせが玄人好みでとても芸術的。

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これも初めて頂くものだけど蒸した海老芋のソテーをバター炒めの甘露子と合わせたお正月らしい逸品。熟成感たっぷりの古酒はまるでシェリーのような感じ。海老芋の旨みというか美味しさの輪郭が際立つのが面白い。バターの動物性タンパク質やお酒の旨みなどがシンクロするのであろう。薬味として添えられているのは手作りの鯛がたっぷり入った鯛味噌と生姜味噌。古酒にドンピシャ。こんなおいしい野菜料理は生まれて初めて食べた・・

みさこ部長のご主人の博士はまさに天才・・

2015-12-27 18.25.19

最後に先ほどいただいた長期熟成の片野桜を燗で頂く。大阪錫器のもので手触り口当たりも素晴しい。個性たっぷりで独特の渋さとひね感、香ばしさ、いい意味での雑味が米焼酎のようでとても面白い。温かくしたときの味の変化に驚く。お酒が生来強い方なのと飲み飽きしないのでいつも飲み過ぎて酔っぱらってしまうのがもったいない。

仲のいい友達と2人で行って間接キスをしながらお酒と料理をシェアするのがお薦め。お店が狭いので予約必須。訪問するときはペロペロ見たと言えばわかりやすいよ。

本年最後を締めくくる5本の指に入る大好きな店。

ホントはここは誰にも教えたくなかったな・・・

大阪市阿倍野区王子町1-7-8
080-4413-2685
17:00-23:00頃
月火(祝日の場合は営業)

大阪市 松虫 カフェ居酒屋