赤間茶屋 あ三五 (アサゴ)

友人と福岡の繁盛店を視察。某有名食通の方が日本一の蕎麦屋が福岡にあるからと言う事でわざわざ訪問。薬院駅から徒歩3分。住宅街である中央区白金と言うところにある。聞く所によれば山口の下関で20年蕎麦を打ち、博多に移転して店を構えて8年らしい。

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ファザードはいたって普通。特に奇を衒った店構えでもなく木の看板が目印。店内に入るとカウンターのみという席の構え。カジュアルな感じの空気が流れている。

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私服を来たご主人と接客係の若いアルバイトが2人。若くて綺麗な女性(奥さんか・・)が調理の補助。指示はすべてご主人から発信。店は全席カウンターのみ。当初は天ぷらでビールを頂きながら最後の締めにそばを頂こうと思ってそのようにお願いをする。単品もいろいろあるがなんか勝手が違う。

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煮えたぎる大釜の前に座る。ライブ感たっぷりの特等席。オープンキッチンを目前に大きな一枚板のカウンターに腰掛けるスタイルは蕎麦屋というよりまさに小料理屋か寿司屋の風情。目の前にメニューが貼ってあるんだけどどうしても勝手がわかんない。

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ご主人が「うちの店の客は注文をしないんです」と訳の分からん事をのたまう。そういえば周りの客も黙って座って出されたものを食しているよう。

実はこの店はご主人が客にお腹の減り具合や滞在時間、好きなもの、野菜を食べたいのか否か、その日の体調などをヒアリングしながら献立を立てて変幻自在にいろんなものを提供すると言うフルオーダーメイドの蕎麦料理店。。

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百合根や蓮根、牛蒡、葱、山菜などの天ぷらをつまみながらビールを頂く。天ぷらは天つゆか辛味大根醤油を選ぶことができる。間違いなく辛み大根醤油をチョイスする。普通に美味しい。
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海老の天ぷらも上質なんだけど店主が仕事をしながら「あなたの食べ方(注文方法)はうちの店ではルール違反」「あとで出すもののバランスが悪くなる」とか言う話になってそこから「蕎麦屋の天ぷらと天ぷら屋の天ぷらの違いは何か」とか言う話になって「おもろいなあ」と思ってたら「野菜食べますか・・」みたいな話になって「今からご主人に何もかもお任せするんで美味しいもん全部出してください〜」って言ってしまったら「それがうちの店の定石です」となり食事が再び始まった。

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左の緑色は蓬を練り込んだもの。右は真っ白な蕎麦で素麺のよう。小麦で作ったそこらのそうめんの白さを超えたピュアな上品でブリリアントな白さ。いわゆる丁寧なつくりが故に「御膳さらしな」と呼ばれるもの。「この蕎麦は食べれば食べるほど腹が減る」とご主人の談。この蕎麦を一目見ただけでノックダウン状態。本物を見たのは実は始めて。滑らかな口当たりと弾力ある歯ごたえとかそけき蕎麦の甘味としっかりとした上品な旨味は今までの蕎麦の概念を変えてしまう。ゆで時間は10秒くらい。ご主人曰くは実は蕎麦は茹でなくてもいいんですとのこと。その理由は後ほど。

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和布蕪とツワブキの前菜。なんとも高貴な逸品であろうか。。野菜の下に蕎麦が敷かれていてそれもめちゃ旨。素材の味がとっても強い。すべての客にコミュニケーションを取りながら違うものを提供しているので記憶力がとても大事と言っていた。
作っている間にも口はずっとしゃべり続けていて蕎麦の種類や産地の説明などが延々と続く。ご主人の蕎麦に対する愛情が半端じゃない。うんちくを語るとかじゃなくて愛情があって、みんなに美味しく食べてほしくて少しでも蕎麦を理解してもらおうという気持ちが尋常ではない。

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この店は、アルコールはエビスの瓶ビールか〆張鶴のみ。蕎麦猪口になみなみと入れてくれるのが嬉しい。純米ならではのまろやかな旨味とふくらみ、程よい酸味と甘味もあって桜餅の香りもしながらの見応えもしっかりある。一言で言えば料理をより美味しくする上品なさばきと吸い込みのいいお酒。この酒をチョイスするご主人のセンスも素晴しい。

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土筆なんだけどご主人が「東北で採れた山菜を蕎麦の出汁でお浸しにしたものが一番美味しい調理法」とのたまふ。山菜は揚げるものではなく麺つゆではかるもの。口に入れるとまさしくその通り。これだけでお酒が一合すすんでしまう。土筆の強い春の芽吹きの味を繊細な蕎麦が受け止める。

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湯葉でさらしなを巻いた蕎麦寿司。蕎麦寿司だけでもこちらのお店は何十種類もあると言っておられた。中に鋳込まれているのはわさび漬け。人工の味は何一つない。アルコールがどんどんすすむ。突き出しの蕎麦味噌もかなり美味しかった。

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芝えびの天ぷらは一番最初に注文したんだけどご主人の指示で最初は揚げたてを出汁につけずにいただく。2匹目は少しだけ出汁につけて食べる。残りは45分置いて味がしみ込むのを待って食べてくださいとの事なのでこのあたりで日本酒と一緒に食す。言葉がでないくらい美味しい。叫びたくなるのを必死でこらえる。

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蕎麦を粥にしたものにとろろをあわせて蕎麦の実を乗せたもの。香りがすごくいい。この香りだけでお酒が進む。この間もご主人との蕎麦談義が進みまくる。出している料理が科学的で論理的な事に驚く。カウンターの中で忙しく動き回りながらしゃべりまくるご主人に敬服する。客と料理の案内と蕎麦に関わる話などコミュニケーションを取りながら次から次へと蕎麦を湯がく。天ぷらを揚げる。そして旬の素材を使った美味しいものをどんどん出して来られる。

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更級に柚子を打ち込んだもの。お初天神のお店で昔よく頂いたけどモノが全く異なる。
今まで更科蕎麦に蕎麦の風味があるとは思わなかった。田舎そばに比べたらパンチはないけど品のいい料理として蕎麦を昇華させていることに敬意を表する。蕎麦の甘さもちゃんと感じられて辛み大根と一緒に食べるといっそう蕎麦の甘味を感じる事が出来る。

すべての蕎麦は前日に打たれると聞く。一晩寝かすと対流がよくなるらしい。それを小さなパックに分けて冷蔵庫で保管。私は蕎麦って言うのは三たて(「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」)が良いとずっと思っていたんだけどご主人の説明を聞いて目からうろこ。

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ここで生の穴子をあぶり出す。そして温かいそばを口直しにとのこと。これを食べると又お腹が減ってスタートのお腹の具合に戻るとのこと。十割り蕎麦なんだけど蕎麦で1合、穴子で1合、汁で1合日本酒が飲める。この汁の完成度には驚いた。素材もさながら蕎麦のお手本と言った感のあるもので今まで食してきたものとは全くレベルが違う。

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鴨汁も食すようにと勧められるがお腹がいっぱいになってきたのでやんわりと辞退すると蕎麦を抜いた鴨汁なら食せるだろうと言う事でいただくと再びぶっ倒れるくらいの衝撃を頂戴する。岩手の鴨と言っておられた。分厚い鴨の旨さもさながら葱とエキスの出まくった汁もかなり濃厚。これで再びお酒2合頂くこととなる。

ご主人曰くは蕎麦は盛りそばよりも温かい出汁で食べた方が味がよくわかると言っておられた。ご主人のお勧めは「花巻」つまり熱々のかけそばにちぎった海苔を乗せた蕎麦の事。昔に関東で見たことあるけど最近は存在すら聞かない。たぶん海苔を蕎麦に乗せた様子が桜の花びらをまき散らした風情を見立てた名前かもしれない。これは次回の楽しみとする。

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〆はご主人一押しの二八そば。「十割り蕎麦は比較的簡単。」「二八は人格が蕎麦に出る。」「これが一番難しい」「うちの店で二八が美味しくなかったらおしまい」などとずっと言っておられた。いわば本日のメインイベントらしい。ビジュアルからわかるけどどの料理も蕎麦も仕事はめちゃくちゃ丁寧で綺麗。蕎麦想像を超える美味しさ。かなりお腹がいっぱいなんだけどもったりしない。程よい歯ごたえと心地いいのど越しも総じてスルスルと食する事が出来る。

「つけ汁」は濃厚でキリッとしているんだけどひたすら丸い。厚削りの鰹が風味よく汁に雑味なく溶け込んでいる。味のバランスも塩梅も完璧。この汁で又お酒が1合飲める。

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最後にそばがきをいただく。実はそばがきってどうやって作るかわからなかったんだけど本来の仕事はそば粉を湯で練ったもの。特製のホウロウの鍋で火にかけながら短いすりこぎのようなもので必死で練り込んで鍋ごと供される。ある塊は炙って出されて汁や味噌をつけて頂く。炙っても炙らなくても美味しいらしくて私は作ったあとの鍋に引っ付く風味満点のパリパリになったそばがきを引きはがしながらそれを肴にまたお酒を1合いただく。

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最後にご主人が自ら入れてくれるそば湯を頂いて出来立てのそばがきに粒あんを乗せた「ぜんざい」でしめる。そばがきはもちもちして旨すぎるのは当然。

最後にご主人が直筆でこの日頂いたものを書いていただく。脱帽なり・・・

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今回カウンター越しにお任せで料理を出してくる蕎麦屋を生まれて初めて体験する。どの蕎麦もどの料理もどこよりも突出している。食材も上質なものばかり。関西に蕎麦ソムリエの方がいらっしゃってその方も一押しのお店らしい。。近日中にもう一度再訪する予定。

福岡市中央区白金1-4-14
092-526-4582営業時間:11:30~21:30
定休日:火曜日、第1月曜日

赤間茶屋 あ三五そば(蕎麦) / 薬院駅渡辺通駅西鉄平尾駅

夜総合点★★★☆☆ 3.5


カテゴリー 九州地区, 麺料理 |

北京

新梅田食道街のスタンディングバー。今は100をこす店舗が建ち並ぶが昭和25年の当初は18件だったと聞き及ぶ。「G」の形をした高さ122cmのカウンターとキャッシュオンの手軽さで近くに行けば必ず立ち寄るクラシカルな止まり木のようなお店。常連になればワインのコルクで作ったマジックで名前が書かれた箸置きを進呈いただける。(私はまだまだ・・・)

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まずはチリ産のメルローワイン350円とソーセージ。ザワークラウトの酸味が心地いい。数千円灰皿の上においておくとマスターが勝手に取っていってくれる。この店では安旨のワインがお気に入り。ブルゴーニュの赤300円とかかなりお得感あり。。

店内は昭和の香り満載でレトロ感あり。。今風のバルとは完全に一線を画している。
料理の価格帯は250円から400円くらいまで。。このあたりの商品構成は素晴らしい。

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名物の「エッグ」300円は塩だけの味付けなんだけど長年使う器から旨味が出ていると言う都市伝説がある。。周りの常連の方が混ぜ方と食べ方を丁寧に教えてくれる。

ただのココットに入った目玉焼きなんだけど食べるタイミングで味が異なるのがおもしろい。醤油を入れると雑味を感じるので私は塩だけが美味しいと思う。

ここからお酒はポーランドのウオッカのズブロッカを所望。。薬草が入っていて体に良さそう。アルコール度数は40度。桜餅のような香りがする。。皆が周りの客に気を使いながらワイワイと楽しむ姿は大人の社交場。禁煙なのも個人的には嬉しい。

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レーズンバター300円はもちろん手作り。レーズンたっぷりで私の大好物。。この店でこれだけ食したいほど。クラッカーは少し残してエッグの残りかすと一緒に食べる。

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ポテトサラダも秀逸。普通に見えるんだけどかなり美味しい。どんなお酒にも合うのが不思議。この店はワインが有名なんだけどアテは板わさとか若布の炊いたんとかが会ってなかなか渋い商品構成。

このお店のご主人は2代目で先代がこの「新梅田食道街」の名付け親。「食堂」でないのがかっこいい。一つ屋根の下で同じ事をするのが「堂」、ここはいろいろな店が狭い通路に並んで別の商売をやっているので「道」だそうだ。まさに我が道を行く・・・か。

こちらのお店も30年前までは日本酒メインの居酒屋だったらしい。今のご主人がワインブームに乗って業態転換。

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北京味噌と呼ばれるニンニク入りの味噌を焼いたもの。。クラッカーに浸けて頂く。。。これもエッグの残りかすに混ぜても美味しかった。スピリタスと一緒に頂くと天国が見える。この店はいつ来ても同じ人に会う。。どんだけ毎日こられているのだろうと思う。この辺りで酔いが回ってきたのでお礼を言ってさっさと帰る。

大阪市北区角田町9-10新梅田食道街 1F
06-6311-2369
16:00〜22:30
定休:日曜・祝日


カテゴリー 梅田/JR大阪, バル |

小好鮨

山口から来阪した友人と表記の店に行く。梅田で寿司を食するときに自分が行きたいと思う寿司店ナンバーワン。阪急電鉄京都線阪急梅田駅茶屋町口より徒歩1分。DDハウスやがんこ寿司のすぐ近く。トイレはないのでDDハウスで済ましてから行くのがお約束。

暖簾をくぐると大きな三角形のカウンターとそのまわりに丸椅子が10席ほど。座ると入り口の引き戸が背もたれになるほどの狭さ。ご夫婦お二人で切り盛り。店も狭けりゃカウンターも狭い。お父さんとお母さんがコノ字のカウンターに入るとワンボックスカーで皆でドライブしながら寿司を食べている気になる。隣の客との密着感も強烈にある。

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まずはお造り盛りあわせ。名物のあわびちゃんはいつもコリコリで美味しすぎる。この店の一番人気のあわびちゃん。この店ではネタはすべて「ちゃん」づけで呼ばれる。生の肝が大好物で私の元気の源。大きく切られた天然ブリも脂がサッパリしてかなり美味しい。剣先イカと平目も秀逸。

この店の横の通りは今や小好鮨通りと呼ばれている。席数が少ないので入店するのがかなり難しい。外国のガイドブックでよく紹介されているらしく中国、韓国、アメリカと外国人率もかなり多い。80才のご主人はインターナショナルでどこの国の言葉も雰囲気で話される。フランス語も出来るらしい。

一日の半分の客が外国人の事もあると言っておられた。お店はそういうことで入店お断り率がかなり高い。しかしお店に入ると今年で53年になる寿司店の矜持とご夫婦の漫談のような掛け合いをしっかりと楽しむ事が出来る。

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大好きなたいらぎ貝はいつも上質。歯ごたえ重視の縦切りが嬉しい。ご主人が塩をかけてくれるのでそのまま頂く。アルコールはよく冷えたキリンラガーと黒松白鹿の常温。そして白鹿の冷酒のみ。。白鹿を燗酒で頂くのがこの店での私流。

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白ミル貝はとてつもなく甘くて貝の香りがふんわりと鼻孔に残る。決して固すぎず貝のえぐみは全くない。いつも思うんだけどご主人の仕入れの目利きが素晴しすぎる。

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今が旬のとり貝はとても色気のあるビジュアル。新鮮なのでコリコリして貝の旨味と共に喉の奥にストンと落ちる。余裕があるときはさっと炙ってアテでいただく。通称「焼きトリ」である。

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分厚くカットされた鯵はしっかり締められているんだけど味はかなり深い。熱燗がどんどんすすむ。女将さんが注文を聞いてお父さんに握る順番の指示を出す。女将さんの陽気さと突っ込みが超面白い。全国からご夫婦を慕って来られる客が多いと言うのもごもっともである。「この年になったらお母さんが男でわしは女みたいなもんですわ〜」とのこと。話の面白さが深くて品がある。

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これも大きく新しく新鮮な赤貝。そこらにあるものとは全くものが違う。これも塩で頂く。ヒモと身でワンセット。この日は中国人客と一緒にカウンターで食す。外国人が来たときは周りの客が皆で相手をするのでとても面白い。外国人客が寿司とご主人を写真に撮る様がいつも面白い。ポーズをとる様も最近はさまになっている。

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福岡産の筍。この時期のこのお店のスペシャリティ。先っぽの柔らかいところと根っこのところがあるんだけど個人的には根っこの方が味がある気がして好き。鮮度がいいためにエグミも全くないしコリコリして柔らかでかなり美味しい。

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国産のトロもめちゃくちゃ美味しいと友人が言っていた。

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個人的に大好きな蛸。お酒と共に頂いていると狭いお店も心地よい空間になってくる。お店の中が一体感があって一人客はさっと食して帰る。長居をしないのがこの店のルール。

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名物のアナゴは注文を聞いてから親父さんがいつも「あっつ〜!」といいながら焼いて握ってくれる。脂ののりも素晴らしくてふっくらしていて香ばしい。

酒以外はだいたい皆、ひとり5000円くらい。勘定を頼むとこの日は二人で「1億2000万円!」とのこと。「安っす〜」と答えると続けてお釣りを「80億円!」と言われて渡される。寿司代よりお釣りの方が多いので「儲かった〜」と喜んで店をあとにする。お店が狭いので店の外に出ると開放感があり銀河系に飛び出た気になる春一番の候。

大阪市北区芝田1-3-12
06-6372-5747 日曜 水曜休み


カテゴリー 梅田/JR大阪, 寿司 |